14日まで行われた国内女子ツアーの伊藤園レディースで、稲見萌寧(22=都築電気)が通算10勝目を挙げた。新型コロナウイルス感染拡大の影響による試合数減少で、昨年と統合された今季としては9勝目。今季2戦を残し、過去に03年の不動裕理(45=フリー)しか達成していない、シーズン10勝の大台も見えてきた。
伊藤園レディースの優勝会見で、稲見は「あと2試合は、今季2ケタ優勝を目指して頑張りたい」と、珍しく期間を定めて次の優勝への意気込みを示した。そもそも具体的な目標を掲げることが少ない。賞金ランキング1位を守って残り2戦となり、2位の古江彩佳に約1700万円差をつけても、賞金女王については「結果的になれたらいいなという感じ」と、人ごとのように話していた。もともと記録全般について「自分がどんな記録を持っているか分からない」と、無頓着の様子。それが、不動に並ぶシーズン10勝には明らかに意欲的だ。
実は、この伊藤園レディースの第2ラウンド終了後に、不動が初めて稲見について語っていた。生涯獲得賞金が現在13億6862万6382円で歴代1位。ツアー通算50勝を挙げている“レジェンド”は、稲見について「私の勝手なイメージだと、彼女の場合はガンガン攻めるというよりも穏やかなゴルフをしているなと思います。さりげなくピンに寄っているとか、派手なプレーじゃないけど、確実にバーディーを取るタイプのような気がします」と語った。まるで自己分析のような評価だ。
不動こそ「派手なプレーじゃないけど、確実にバーディーを取るタイプ」の元祖ともいえる選手だ。03年のシーズン10勝は、出場24試合で達成。今季の稲見が出場43試合で9勝だから、いかにハイペースで優勝を重ねたかが分かる。時代が違うため、一概に比較はできないが、両者に共通するのは、たしかに「確実にバーディーを取る」という強さだ。
この評価を聞いた稲見は「不動さんはすごい方なので、その不動さんに褒められるのはうれしい」と、素直に話した。さらに「今、試合に出場されても、普通に予選を通過して上位で戦っているので、本当にすごい方だなと、ずっと思っています」と続け、尊敬の念を隠さない。
通算勝利数で、稲見はようやく不動の5分の1に到達したところだ。それでも不動が、自己評価のように稲見を評したのは、その将来性への期待の表れともいえる。今後、稲見が、どこまで不動が持つ数々の記録に迫ることができるのか。通算50勝、さらには生涯獲得賞金歴代1位にも迫ることができるのか。不動が稲見について初めて語ったことは、後々になって女子ゴルフの歴史をさかのぼった時に、非常に価値ある取材をした気がしている。【高田文太】