【マスターズ】松山英樹の72ホールを見た記者が選ぶ 歓声や拍手が大きかったプレー上位3傑

松山英樹(2021年10月撮影)

松山英樹(LEXUS)が、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ、男子ゴルフの今季最初のメジャー、マスターズが閉幕した。第2ラウンド(R)終了時点で2位となり、史上4人目の連覇の期待が高まったが、最終的には優勝したスコッティ・シェフラー(米国)と12打差。通算2オーバーで14位だった。

米ジョージア州オーガスタ・ナショナルGCを舞台に、10日までの4日間、パトロンと呼ばれる観衆が多数駆けつけた。目の肥えたパトロンの前では、グリーンに乗せただけのショットは、拍手1つも起きない。だがグリーンの起伏やコースの難度を知り尽くす、ゴルフ通のパトロンだからこそ、華麗なショットやパット、果敢な挑戦には大歓声で賛辞を送る。4日間、72ホールを見た記者が、パトロンの歓声や拍手が大きかったと感じた、松山のプレー、上位3傑を紹介する。

◆第3位 第1R1番パー4、ピンまで残り36ヤードからの第3打。グリーン左のラフ、バンカー越えのアプローチを、60センチにピタリと寄せた。それまで全く歓声がなかった松山のプレーに今大会初めて、しかも大きな拍手を伴って歓声が起きた。直前の組で、約1年5カ月ぶりに復帰したタイガー・ウッズ(米国)がラウンド。その組についていたパトロンの多くが“ディフェンディングチャンピオンのお手並み拝見”とばかりに、1番グリーンに残っていた。難しいグリーンの起伏も計算に入れた、絶妙なタッチにパトロンだけではなく、同組で回っていたジャスティン・トーマス(米国)も、サムアップポーズで称賛するほど。今年を占うスタートホールで、ボギー発進の危機を回避して、パーセーブにつなげた。

◆第2位 最終R5番パー4、ピンまで11ヤードからの第3打。グリーンをわずかに外し、右足はバンカーに差しかかりそうな厳しい体勢から、パターで打ってバーディー。「ウォー」という大歓声に、松山は右手を挙げて応えた。実はこの5番では、1日前の第3Rでマスターズで2大会ぶりにダブルボギーをたたいていた。その時はグリーンに着弾したが、はね返される形で、手前の傾斜を下ってこぼれた。この日はその残像からか、グリーン後方に打ち込んだが最高のリカバリー。来年以降に向け、難関5番への嫌なイメージを取り除く大きな一打だった。

◆第1位 第2R6番パー3、ピンまで193ヤードのティーショット。打ち下ろしのホールで、松山が振り切ってから約7秒後、静寂を切り裂くように「ワッ」という大歓声が起きた。ピン手前2・5メートルに着弾したボールは、あと少しでホールインワンという90センチへ。この日早くも3つ目のバーディーを奪うなど、第1Rは19位だったが、第2R終了時点で2位に浮上した。

ただ、パトロンの粋なところが、これらをはるかに上回る歓声を、実は松山に浴びせていたことだ。それは最終Rの18番パー4。アジア人初優勝を果たした思い出のグリーンに向かい、歩いている時のことだ。グリーンを取り囲んだパトロンが一斉に立ち上がり、拍手で出迎えた。ディフェンディングチャンピオンを、スタンディングオベーションという最敬礼で迎えた。

スコアの関係で、昨年よりも早くスタートし、昨年のような西日というには時間が早かったが、日差しを浴びながら松山は歓声に手を挙げて応えた。この時の様子について「パトロンの温かみを感じたか」と聞かれた松山は「それは感じますね」と、ホールアウト後に、しみじみと語った。

優勝者の証し、グリーンジャケットは、今大会で1年間の持ち出し可能期間を終えた。今後はオーガスタ・ナショナルGCで保管されるが「また外に持ち出せるように頑張りたい」と、2度目の優勝へと思いをはせた。米国で、本当の意味で帰る場所ができたことを実感できた今大会。松山にとっては、初優勝に勝るとも劣らないほど、こみ上げるものがあったのかもしれない。充実した、すがすがしい表情と、打ち明けた再びマスターズ制覇への思い。アマチュア時代から憧れた舞台は、初優勝から1年経過してなお、懐の深さを示してくれた。結果だけではないものを得て、自然と笑みがこぼれていた。【高田文太】

※全選手の全ホールの全プレーが、マスターズ公式ホームページ https://www.masters.com で視聴可能です。