女子ゴルフで史上初めてジュニアメジャー4冠を達成した「天才ゴルフ少女」と呼ばれる須藤弥勒(みろく、12=ゴルフ5/太陽自動車)の母みゆきさん(51)が、乳がんで右胸の全摘手術を受けていたことが18日、取材で明らかになった。
みゆきさんが右胸に違和感を覚え、しこりがあることに気づいたのは3月。すぐに医師の診察を受けたが、浸潤性乳管がんのステージ1と診断された。同月、群馬県内の病院で手術を受け、10日間の入院を経て退院。現在は再発予防などのためにホルモン治療を行いながら、基本的には自宅療養に努めている。
弥勒の父憲一さんによると、手術は成功したが、毎月定期検査を受け、今後5~10年は治療を続ける必要がある。体重の増減は激しいものの、症状は安定しているという。
手術後、遠方で行われる弥勒の試合にも、できる限り同行。無理のない範囲で、コースでプレーを見守ることもある。みゆきさんは「きつい時もありますが、なるべく子どものそばにいたいですから」と話した。
憲一さん、みゆきさん夫婦には桃太郎君(13)、弥勒、文殊君(8)と3人の子どもがいる。みゆきさん自身、母親をがんで早くに亡くした。がんを告知され、つらくても泣いている時間はない。子を思う一心で右胸全摘手術を即決した。「私は苦しい思いをしたので、なるべく子どもたちのそばにできる限りいてあげたい。下の子はまだ8歳。子どもを育てあげないといけない。切り替えていかないといけない。1日でも長く生きたい。自分の中では潔く、ためらいなく決断できました」。
憲一さんは「妻ががんだと分かった時、家族で泣きました。すべてが順調の中、奈落の底に突き落とされた感じで、人生は一寸先は闇だとあらためて実感しました」と胸中を明かした。母ががん告知されたと知った弥勒は、しばらくぼうぜんとして、魂を抜かれたような感じだったという。憲一さんは「このような時こそ、心を強く持って、しっかりと前進していかなければ」と家族全員に説いた。
弥勒一家の生活は一変した。「少しでも家族一緒に過ごしたい」。家族全員の思いが一致し、みゆきさんと過ごす時間が家族の最優先事項に。弥勒は茨城県内に練習拠点を置いていたが、今は自宅がある群馬県内でトレーニングを行っている。
みゆきさんは子どもたちの成長を感じている。「弥勒は前から優しい子でしたが、闘病前に比べ、荷物を持ってくれたり、肩をもんでくれたりと、気を使ってくれるようになりました。料理を作ってくれたりと、子どもたちは積極的に私の状態を気にして、助けてくれようとしています。家族と過ごせる時間が大事。家族がいるから頑張れます」。あらためて家族の支えに感謝している。
みゆきさんには目標がある。弥勒は規約で出場可能となる満13歳を迎える来年8月にも、日本女子プロゴルフツアーデビューすると宣言したばかり。すでに、主催者推薦出場のオファーが多数届いている。「早く体力を元通りに戻して、来年のデビュー戦を何とか導いてあげたい」。これまでみゆきさんが弥勒のキャディーを務めてきた。晴れ舞台に立つ娘をそばで支えるため、デビュー戦でのキャディー復帰を目指している。「いつ再発してもおかしくない状況ですが、弥勒を優勝させたい。目標がある。前よりも充実しています」と前向きに話した。
弥勒の意識も変わった。「お母さんに早く治ってもらって、デビュー戦もそうですし、トーナメント参戦するようになってからもキャディーをしてもらって、たくさん試合に出て優勝して、いっぱい思い出を作りたいです」。ゴルフへの集中力は以前よりもさらに増した。「お母さんのためにも、何とか結果を出したい」。切実な思いも重なり、必死に練習に取り組む日々を過ごしている。
毎年、弥勒はクリスマスの夜、サンタクロースに手紙を書いて枕元に置く。これまでは「もっとゴルフがうまくなりたい。この技ができるようにいい案を出してほしい」などと、自分の願いごとを書いていた。今年は母みゆきさんの病気治癒をお願いすると決めている。「お母さんに何としても治ってほしい。そうお願いします。サンタさん用に、クッキーや牛乳を去年より10倍多く置きます」と話した。