<全国高校バスケット選抜優勝大会:延岡学園68-66尽誠学園>◇最終日◇29日◇男子決勝◇広島グリーンアリーナ

 2年連続同じ決勝となった総体覇者の延岡学園(宮崎)-尽誠学園(香川)戦は延岡学園が熱戦を制して2年連続2度目の優勝を果たした。9月1日に就任した内村昌弘コーチ(29)とエースのセネガル人留学生ジョフ・バンバ(3年)が9月に衝突し一時はチーム崩壊の危機に陥ったが、絆を強めて臨んだ大会で連覇&2冠を達成した。

 66-66で迎えた残り28秒、尽誠学園川上(3年)の伸ばした手の上を越え、レイアップシュートが決まる。今大会192点を決めた大黒柱バンバだった。優勝が決まると、バンバはセンターサークルでひざまずき、長い手で床をバンバンたたいて喜んだ。天を見上げ「ウォーッ」と叫んだ。

 延岡学園に激震が走ったのは8月の総体優勝後だった。12年間チームを率い6度の全国優勝に導いた名将北郷純一郎前コーチ(70)がbjリーグ宮崎のヘッドコーチに就任することが明らかになった。

 主将の寺園修斗(3年)は「先行きが見えなかった」と振り返るほど、チームは危機の真っただ中に放り出された。そこで後を継いだのが、同校女子バスケットボール部の内村コーチだった。

 老練な北郷前コーチと、若い内村コーチでは、当然のようにやり方はまるで違った。「肩に力が入って全てをコントロールしようとしていた」。内村コーチは必死に選手と接したが、急ぎすぎてチーム内にギクシャクした空気が漂った。バンバが衝突したのは就任直後の9月中旬だった。練習後のバンバの態度を注意すると、バンバが反発。内村コーチは思わず「そんな選手はいらない。セネガルに帰れ」との言葉が出てしまった。

 校長ら学校関係者の慰留もあり、何とかバンバは練習を続け、チームは崖っぷちで踏みとどまった。大会前の11月末、内村コーチは選手寮のバンバの部屋を訪ね、お互いが謝罪して和解し、事なきを得た。「雨降って地固まるではないが、絆が深まった」。幸いなことに、いい形で大会に入ることができた。

 試合後の会見でバンバは「内村先生と日本一になって本当にうれしいです」とコメント。隣にいた内村コーチは目に涙を浮かべて言った。「この言葉で報われた」。来年3月いっぱいで女子コーチに復帰する内村コーチは、短いコメントに心を込めた。名将のあとを受け、無我夢中で選手とぶつかった4カ月の末に、最高の結果が待っていた。【松屋圭祐】