フィギュアスケート14年ソチ五輪金メダリスト羽生結弦(22=ANA)の今季フリープログラムが、05-06年シーズン「SEIMEI」の再演となることが8日(日本時間9日)、カナダ・トロントで行われた公開練習で発表された。羽生にとっては「自分でいられる、滑っていて心地よい」プログラム。昨季に入る前から「五輪で使おうと決めていた」と明かした。

 既にアイスショーで披露している新ショートプログラム(SP)も04-05、05-06年に使用した「バラード第1番」の再演。五輪でSP、フリーともに過去のプログラムを滑るのは極めて異例。世界最高得点を出した得意の曲で、66年ぶりとなる連覇に挑む。

 平安時代の「陰陽師(おんみょうじ)」安倍晴明をテーマとした「SEIMEI」は、自ら選んだ思い入れのあるプログラムだ。狩衣(かりぎぬ)をイメージした衣装に加え、振り付けにも能や狂言を研究して日本の伝統を取り入れた。15年のNHK杯で当時の世界最高得点216・07点をマーク。続くグランプリ(GP)ファイナルではさらに219・48点と記録を塗り替えた。

 2季前のフリーは4回転ジャンプ2種類3本だったが、今季は3種類5本を入れる予定。滑り慣れたプログラムで、これらのジャンプも成功させれば昨季の世界選手権で出した223・20点超えも見えてくる。SP、フリーともに世界最高点を更新できるかとの問いに羽生は「はい」と自信たっぷりに答えた。

 見慣れたプログラムという懸念について、羽生を指導するブライアン・オーサーコーチ(55)は「それはない」と否定した。「誰が見ても、いいなぁと思うプログラムだし、振り付けも新しくなっている。ただ、レベルを引き上げる必要はある」。羽生も「また、と思わせないように演じたい」。2度目の「SEIMEI」をいかに進化させるか。五輪に向けて、新たな挑戦が始まる。