卓球の有望株が集う“虎の穴”が仙台にある。男子世界ランク6位の張本智和(15=エリートアカデミー)や、五輪女子団体で12年ロンドン大会銀、16年リオデジャネイロ大会銅メダル獲得の福原愛(29)らを輩出した仙台ジュニアクラブの選手たちが通うのが、仙台市内にある「張本卓球場」だ。張本兄妹の両親でコーチの宇(ゆ)さん、凌(りん)さん夫妻が16年8月に開設。幼稚園年長児から中学3年生までの30人が日々、練習に打ち込む。凌さんが「いつかここからオリンピック選手が出てくれれば」というエリート養成場に、潜入した。【取材・構成=神稔典】

 張本卓球場の玄関を入ると、仙台ジュニアクラブの選手たちが獲得した団体優勝トロフィーや盾がずらりと並ぶ。凌さんは「この20年間で集まった全国大会、県大会での団体優勝トロフィーは100個以上」と明かした。飾り切れない分は倉庫で大切に保管されている。2階が練習場で、広さ約200平方メートル。そこに卓球台が6台設置されている。午後5時ごろ、学校を終えた小中学生たちが集まり、練習が始まる。

 同卓球場に通う小学生21人中、11人が全国大会出場を決めた。凌さんは「中学生を含めた全体でも半分以上は全国レベルの選手」と言う。コーチを務める宇さんは男子ジュニア日本代表コーチ、凌さんは95年世界選手権の元中国代表選手。世界トップレベルの指導者から指南を受け、初級者から上級者まで、高い志を持ちながら切磋琢磨(せっさたくま)している。

 今年1月から孫雪(そん・せつ)さん(26)が新たに指導者として加わった。主に張本美和の指導にあたるが、その“スパルタ指導”の様子を見て周りの選手も刺激を受ける。昨年1月、張本智和に憧れて入った浅野和磨は「妹の美和選手も本当に強くて尊敬している。こんな環境で卓球ができて幸せ」と笑顔を見せる。そして、卓球を始めて9カ月後に仙台市内の新人戦中学2年の部で優勝。「最初はラリーもできなかったのに、凌さんが優しく教えてくれたおかげ。僕も智和選手みたいに世界で活躍する選手になりたい」と目を輝かせた。

 すでに定員はいっぱいだが、同卓球場に通いたい子どもたちのために週1、2回ほど「オープン教室」を開いている。土日はキャンセル待ちになることもあるほどの人気ぶり。凌さんは「毎日の練習が大切。地道に努力すれば絶対に強くなれる」と、夢見る子どもたちの背中を押した。