卓球の有望株が集う“虎の穴”が仙台にある。男子世界ランク6位の張本智和(15=エリートアカデミー)や、五輪女子団体で12年ロンドン大会銀、16年リオデジャネイロ大会銅メダル獲得の福原愛(29)らを輩出した仙台ジュニアクラブの選手たちが通うのが、仙台市内にある「張本卓球場」だ。張本兄妹の両親でコーチの宇(ゆ)さん、凌(りん)さん夫妻が16年8月に開設。幼稚園年長児から中学3年生までの30人が日々、練習に打ち込む。凌さんが「いつかここからオリンピック選手が出てくれれば」というエリート養成場に、潜入した。

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 張本智和の妹美和が躍進を続けている。国際大会デビューとなる7月のジュニアサーキット中国大会ミニカデットの部で優勝。約3週間後の全日本選手権カブの部では3年ぶりの栄冠をつかみ取った。「世界の舞台で自分がどこまでできるか楽しみ。もっともっと強くなりたい」と向上心あふれる金の卵だ。

 センスの塊だ。母凌さんが仙台ジュニアクラブのコーチとして働くかたわら、0歳からおもちゃのラケットを振っていた。2歳頃から自然とラリーができるようになり、3歳5カ月で宮城県小学生卓球選手権バンビの部(小学2年生以下)で準優勝。凌さんは「智和が同じ年で出た時は4位だった。その分、美和の方が素質があると言う人もいる」と評する。

 昨年7月から木下グループに所属し、今年1月から孫雪さんの厳しい指導を受け、実力を高めてきた。水分補給以外の休憩は認めない1時間打ちっ放しの特訓や、約200平方メートルの卓球場を120周走るトレーニングなど、妥協を許さない練習を重ねている。

 美和は「孫さんは厳しい」と苦笑いを浮かべつつも、「打った後の戻りが遅かったけど、練習したおかげで試合中でも無意識に速く戻れるようになった」とその効果を実感する。最大の目標は「オリンピックで金メダルを取ること。そして、いつかお兄ちゃんよりも強くなりたい」。新たな師匠とともに、その夢をつかみ取る。

 ◆張本美和(はりもと・みわ)2008年(平20)6月16日、仙台市生まれ。2歳から本格的に競技を始め、15年に全日本選手権バンビの部(小学2年生以下)で優勝。家族は元選手で男子ジュニア日本代表コーチの父宇さん、95年世界選手権中国代表の母凌さん、全日本選手権世代別6連覇を達成した兄智和。146センチ、38キロ。