フィギュアスケートの世界選手権が20日、さいたまスーパーアリーナで開幕する。

18日は本番会場で公式練習が行われ、女子で初出場の紀平梨花(16=関大KFSC)がトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を23本中15本着氷させた。16歳7カ月で優勝すれば、17歳5カ月の浅田真央を抜いて男女通じて日本勢最年少。

グランプリ(GP)ファイナル、4大陸選手権との3冠も日本勢男女初の快挙となる。課題のショートプログラム(SP)でミスをなくし、3本の3回転半をそろえた先に頂は見える。

きらびやかな照明に、公式練習観覧券を手に来場したファンからの心地よい拍手。その先の銀盤で、紀平が自国開催の大舞台へ気持ちを整えた。正午前に始まった35分間の練習では、課題のSP「月の光」の通しで3回転半をきっちりと成功。午後の35分間と合わせて15本着氷させ「初めての世界選手権が大きなスーパーアリーナのリンクで緊張もあるかもしれないけれど、自分らしく」と笑った。

国際大会6戦全勝で迎えた今季の目標地点。18年平昌五輪金メダルのザギトワ、同銀メダルのメドベージェワのロシア勢ら、多くの実力者もさいたまのリンクに足を踏み入れた。それでも紀平のベクトルは自分に向く。「ショート(SP)とフリーでしっかり完璧な演技をすれば優勝が見えてくると思うので、ノーミスの演技をそろえることだけを考えたい」。国内外の注目やシニア1年目の疲労も「特に感じていない。プレッシャーも感じていなくて、今できることを、この大きなリンクで緊張しないように。完璧な演技を目指したいということだけです」と頼もしく言い切った。

今月11日までの米コロラド合宿ではフリー「ビューティフル・ストーム」を担当するトム・ディクソン氏の指導で、細かな振り付けの角度や、表情など細部を磨き上げた。この日2回目の公式練習ではループやルッツでのミスも見られたが、本番2日前としては上々の仕上がりと言えそうだ。

米国から帰国後には母実香さん(47)から「世界選手権は特別なもの。そう簡単なものじゃない。五輪の練習が3回できると思ってやろう」と背中を押された。今大会は1年の集大成であり、22年北京五輪金メダルに向けた現在地の確認になる。16歳の必勝プランは「ショートで全てのジャンプをしっかり跳ぶ。後はフリーのトリプルアクセルを跳べば、いい波に乗れる」。まずは、力を出し切ることに集中する。【松本航】