美しさで戦う。13日の男子シンクロ板飛び込みで、寺内健(38)坂井丞(26=ともにミキハウス)組が7位に入って「東京五輪内定1号」になった。決勝12組中最も難易率が低い種目構成だったが、シンクロ種目でかぎになる同調性に焦点を絞り、内定条件の8位以内をクリア。その裏には回転数を増やすために両足を曲げる抱え型ではなく、動きがそろったように見えやすい両足を伸ばす、えび型で種目を統一した戦略があった。

日の丸を掲げた寺内と坂井が笑顔を浮かべた。大前提としていた8位以内をクリア。寺内は、内定1号、夏季日本勢最多の6度目五輪、日本初のシンクロ種目の東京切符に「世界に通じることを少しは見せられた」。寺内を指導する馬淵コーチは「ペアの難易率は足りない。だがそれは武器にもなる」と口にした。

飛び込みは、種目の難易率(難易度)に10点満点で審判が下す評点をかけて得点を出す。同じ評点なら、難易率が高いほうが高得点。決勝で寺内、坂井組の難易率は6本すべてを足して16・5。決勝12組で最も低かった。最高のメキシコは18・5。ただ低い難易率を補う戦略がある。

寺内、坂井組は、足の形を6本すべてえび型に統一。その構成も唯一だった。えび型は両足を伸ばすため、回転数を多くできない。他国はより回転しやすい抱え型を入れている。抱え型は109C(前宙返り4回転半抱え型)のように、高難度の技を使える。

ただ寺内は、抱え型に個人種目と違うシンクロ種目特有のマイナスがあると指摘する。「審判のスコアはシビアになっている。抱え型は2人の動きが合わないとスコアをひかれる。(回転中に)開いた足の角度がずれていても影響がある。その分、えび型は動きが合うとすごくスコアが出る」。馬淵コーチも「えび型は演技がピタリとそろうと好印象。抱え型で水面ぎりぎりまで回るよりも(回転が少なくても)えび型で余裕をもって水面に入るほうがシンクロの部分を長く見せられる」。

内定1号で五輪まで1年の準備期間を得た。寺内は「同調性は、より繊細さが求められている。自分たちに有利な部分でもある」と手応えをつかんでいる。難易率を上げるかどうかは今後の検討課題だが「美しく飛ぶ」というペアの原点が変わることはない。【益田一弘】