レスリングの世界選手権(9月、カザフスタン)の非五輪階級代表を決めるプレーオフが都内で行われ、リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)銀メダルの太田忍(25=ALSOK)がグレコローマンスタイル63キロ級で代表を決めた。

最強の助っ人として参戦したのは、五輪4連覇の伊調馨(35)だった。同じ所属の先輩で、大橋監督が「お前のために来てもらった」と援軍を頼み、セコンドに入ることが決まった。女子選手が男子選手のセコンドに入ることも珍しく、ましてやレスリング界の偉人。試合前に記念撮影をお願いしようとすると、「集中しろ」のゲキも飛ばされ、「緊張しましたよ」と言いながら、大先輩の前では負けられないとばかりに試合では躍動した。

代表の座を争ったのは、今も練習拠点にする日体大の後輩で「めちゃくちゃかわいい後輩」という山田義起。「最大限の敬意を持って、全力でやらせてもらいました」と心を鬼にして、攻めきった。相手の消極性を引き出してグラウンドに持ち込んでからは独壇場。ローリング連発で、最後は得意のがぶり返しで11-0と完勝した。

主戦の60キロ級では6月の全日本選抜でライバルの文田健一郎に敗れた。文田が世界選手権でメダルを獲得すれば、同級の東京五輪代表に内定するため、1つ上の五輪階級となる67キロ級を視野に入れる。60キロ級から体重増が求められるが、この日も問題なく63キロ級に調整し、67キロ級でも問題なしを強調。「体重は減っても増えても大丈夫。スポンジみたいなんで、これからは『スポンジ・ボブ』って呼んで下さい」と報道陣にお願いする一幕も。海外ではその俊敏な動きから「忍者レスラー」として親しまれるが、「最近は忍者っぽい動きはできていないので」と新愛称を推した。

当面は9月の世界選手権の結果待ちとなる。「僕にとって良い結果を待ってます」と、五輪枠が埋まらないことを願いながらも、目標とする五輪での金メダルへ向けて準備を進める。【阿部健吾】