16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)競泳男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(25=ブリヂストン)が、三度目の正直で日本代表候補入りした。200メートル個人メドレー予選で全体トップの1分58秒73を出して基準タイムをクリアした。決勝は1分59秒23で優勝。春先の休養から復帰5戦目、通算19レース目で、強化合宿の参加や国立スポーツ科学センターを使える権利を獲得。金メダリストが東京五輪へのスタートラインに立った。

萩野が、やっと壁を乗り越えた。200メートル個人メドレー予選。全力で飛ばして1分58秒73。基準タイムを0秒50上回った。レース直後は「頑張りました」とひと言。復帰5戦目、通算19レース目での突破に「節目の1つ。切る、切るといって切れなくて。ものすごく大きい」と素直に喜んだ。

今月頭には右肩に痛みが出て練習を休んだ日もある。スペイン合宿中の平井コーチもいない。それでも「東京五輪は午前決勝。午前からやっていかなきゃダメだ」と自分で判断した。決勝でタイムを落としたのは反省点だが、予選から全力で泳いだ証しともいえる。

8月のワールドカップ東京大会、9月の茨城国体でも基準タイムに挑戦した。だが練習の内容がレースにつながらない。休養前ラストとなった2月のコナミオープンと似ていた。2度目の挑戦に失敗した茨城国体後、平井コーチに「お前自身が変わっていないんじゃないか?」と問いかけられた。人生初の休養、自分を見つめる1人旅。シンガー・ソングライターmiwaとの結婚という、うれしい出来事もあった。ただレースで気負って泳ぎのバランスを崩す傾向がまた顔をのぞかせた。

解決策はシンプルだった。レースで泳ぐ。10月下旬から1カ月で4大会。新潟スプリントで小学生との予選を本気で泳いだ。アップ時間を早めて「やり過ぎなぐらい」に体を動かした。

この日、会場を訪れた五輪2大会連続2冠の北島康介氏は「ここからがスタートだ」と言う。金メダリストの後輩に「誰かにカツを入れられるという存在じゃないんだ。どんな練習をするか、どんな五輪にするか。自分の力で上がっていく。そういうものだ」とゲキを飛ばす。萩野は「世界記録は1分54秒00(ロクテ)。このタイムでいうのはおかしいかもしれないが、そのぐらいで泳がないと金メダルは届かない」と強い口調で言った。【益田一弘】