天皇杯全日本レスリング選手権(19~22日、東京・駒沢体育館)の男子フリースタイル70キロ級に本名栄仁(44)が出場する。日体大4年だった97年以来、22年ぶりの出場になる。44歳は同級エントリー選手中最年長だ。現在はクラブチーム「巻っずレスリングクラブ」を主宰する指導者。闘争心を子どもたちに見せる場にする。

苦戦は覚悟の上。「何年かして、子どもたちが『コーチは全日本選手権に出ていたんだ』と分かってくれればいい」。本名のモチベーションは自身が指導する巻っずクラブの小、中学生33人に戦う姿を見せること。今大会の各級優勝者はオリンピック(五輪)アジア予選(来年3月27~29日・中国)の出場権を手にする。猛者たちがガチンコ勝負を挑んでくる中、「簡単にはやられない」と意地を見せる。

44歳はフリースタイル70キロ級の出場16人中最年長。7月の全日本社会人選手権で3位に入り、出場資格を手にした。22歳だった日体大4年以来、22年ぶりの大舞台に「体力、スタミナ面は正直きつい」と苦笑いする。一方、「経験は積んでいるので」。全日本選手権は日体大3年の96年にフリースタイル69キロ級で準優勝した。五輪を目指せる位置にもいた。「攻めさせておいてバックに回る。またはタックルに入る」。若手を翻弄(ほんろう)する駆け引きは身についている。

普段は指導が中心で自身の練習はほとんどできないが、今回は社会人選手や高校生を相手にスパーリングを重ねた。10月に完成したクラブ専用練習場に高さ3メートルのロープをつるし、毎日3~5往復して腕力を維持。できる準備はしてきた。

全日本選手権出場は今回が最後と決めている。「体力的にも高いレベルに挑戦できるのはこの辺が限界。動けるうちに、試合に向けて準備する様子を見せ、試合で感じたことを子どもたちに還元したい」。本気を感じてもらう貴重な機会。「1つは勝ちたい。自分が勝てば盛り上がるでしょう」と笑った。【斎藤慎一郎】

◆本名栄仁(ほんな・えいじ)1975年(昭50)11月13日生まれ、新潟市出身。巻農高(現巻総合高)では3年の時に全国高校選抜、インターハイで3位。日体大に進学し、4年の時にフリースタイル主将を務め、インカレで優勝。07年に「巻っずレスリングクラブ」を設立し、監督を務めている。170センチ、普段は75キロ。