今季限りで退任する京産大の大西健監督(69)が、涙で47年間の監督人生に終止符を打った。初戦で19-24で日大に惜敗。73年の就任当時3部だった同校を、たたき上げの精神でFW戦にこだわり、関西リーグ優勝4度の強豪に育てた。目標の日本一に1度も届かなかったが、最後はスクラムに勝ち、勝負に負けた。後任は元日本代表の元木由記雄氏(48=現ヘッドコーチ)と、OBの伊藤鐘史氏(39=FWコーチ)が有力候補。年明けに大学側の承認を経て正式決定する。

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あと1歩-。その差が、47年間追い続けてきたものだった。監督人生の最後はわずか1トライ差。選手が声を上げ泣くのを見ると、こらえきれなくなった。「監督人生に悔いはない。胸を張ってくれ」。7度の4強が最高で1度も日本一に届かなかった。学生時代から日本代表だったSO広瀬を擁した95年度は同じ日大に初戦で敗れ、WTB大畑がいた97年度は4強。わずかな差が大きな壁だった。

子供がなく、シーズン中は自腹を投じ部員に毎日、ちゃんこ鍋を食べさせた。W杯に出場したSH田中ら多くの日本代表を輩出した。

座右の銘は「努力は才能を陵駕(りょうが)する」-。「日本一になるために最大の努力をする。そこに意義がある」。この日、京産大のエース番号3番を付けた寺脇は日本航空石川高時代、控えだった。たたき上げで成長し来春、プロ契約でサニックス入りする。「自信がなかった僕に強みを教えてくれたのが大西先生。試合は負けたが、スクラムは負けなかった」。

大学ラグビーの監督では明大を67年率いた北島忠治氏に続き、同大の岡仁詩氏(ともに故人)の36年を超える。後任はOBの伊藤氏、13年から指導にあたる明大出身の元木氏が候補。1月中に大学の承認を経て決める。記憶に残る監督の最後は、観客が総立ちになって見送った。【益子浩一】