萩野公介(25=ブリヂストン)が、失意のレースから一夜明けて開き直った。200メートル個人メドレーで1分59秒23の2位。宮本一平(20)に0秒12差で競り負け、日本水連が定める五輪派遣標準記録も1秒25及ばなかったが「しっかりと泳げた」と前向き。失敗をひきずる悪癖から改善の兆しを見せた。今大会は世界新3000万円、日本新500万円の賞金が設定されたが、獲得者は出なかった。

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ラスト50メートルの自由形勝負で負けた。タイムも自己ベストに4秒16及ばない。それでも萩野の声は明るかった。「いろんな人に怒られるかもしれないが、1本集中して泳げた。望む結果ではなかったが、1人の水泳選手になれた。昨日は(レース前に)怖くなったが、今日は全力でやろうと思った。また頑張ります」。

前日15日は400メートル個人メドレー4位。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)金メダルをとった大切な種目で「この試合が始まる前はいい記録が出るだろうと思った」。自分への期待と試合への不安で板挟みになり「怖くなった。自分で自分の首を絞めて始まる前に終わっていた」。休養を決断した昨年大会と似た状況に陥った。

危険な兆候だった。ただ前夜は「全力を出さないと戻ってくるものも中途半端になる」と悔いが残った。平井コーチが大会前に言った「何と戦っているんだ」という言葉も心に響いた。一心にいい泳ぎ、いい記録に求める。スイマーの原点を思い出し、開き直った。

1度崩れると立て直せない-。萩野の悪癖だったが「今日は怖くなかった」。一発勝負の代表選考まで残り1カ月半。楽観的になれる状況ではないが、この日見せた兆しが、復活の道しるべになる。【益田一弘】