レスリング男子グレコローマンスタイル65キロ級の乙黒拓斗(21=山梨学院大)が完全復活への手応えをつかんだ。25日、優勝したアジア選手権の開催地インドから帰国。3試合を戦い、10-0、10-3、10-2と完勝で勝ち抜いた戦いに、「攻撃力も復活してきた。去年は得点が少なかった。20年の最初の試合で得点も取れたので、それがよかった」とほほ笑んだ。

18年の世界選手権、日本男子史上最年少の19歳10カ月で王者となった。類を見ないスピードに、伸びるようなタックルは周囲を驚嘆させた。何より、どこまでも攻めるその胆力が魅力と映った。ただ、19年は苦しんだ。菌が入った右膝の感染症の回復が長引き、試合直前には故障などが続いた。世界選手権には出場したが、本調子には遠く3回戦で敗れ、東京五輪の出場枠を確保するにとどまった。昨年末の全日本選手権で優勝し、代表内定を決めたが、苦難の1年間だった。

年が変わり、ようやく納得の調整が積めてきた。「去年は試合1週間前から練習を始めることもあった。今回は2カ月間できた」と、日々の蓄積を試合で発揮する当たり前だった調整が帰ってきた。

大会では2回戦で世界ランク3位のニヤズベコフ(カザフスタン)、決勝では同2位のバジラン(インド)を撃破した。オリンピック(五輪)までにロシアかイランへの遠征を考えており、同1位のラシドフ(ロシア)と手合わせできれば、ライバル候補3傑との手合わせを済ませられる。

「スパイスが合わないのかなあ」。空港では胃をさすってぐったりしていた。試合後にインドでカレーなどを大量に平らげたが、「やられました」と苦笑しながら、確信十分の遠征となったようだ。