フィギュアスケート女子の紀平梨花(17=関大KFSC)も新型コロナウイルスの影響で世界選手権が中止となり、シニア2年目の全日程を終えた。

跳ぶのか、跳ばないのか-。今季注目されたのは4回転サルコーへの挑戦だった。国際スケート連盟(ISU)公認大会で成功させれば、シニア日本女子初の大技。今季を振り返る特集の後編は、紀平の考えを掘り下げる。

  ◇  ◇  ◇

◆チャレンジ・カップのフリーにおける紀平のジャンプ◆

順ジャンプ名(基礎点)結果

(1)3回転サルコー(4.30)5.50

(2)3回転半+2回転トーループ(9.30)11.38

(3)3回転ルッツ(5.90)7.32

(4)3回転半(8.00)10.08

(5)3回転フリップ+3回転トーループ※(10.45)11.62

(6)3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループ(9.79)10.97

(7)3回転ループ(5.39)6.57

【注】4回転サルコーの基礎点は9.70点。※以降は演技後半のジャンプで基礎点が1.1倍

  ◇  ◇  ◇

世界選手権の中止が決まり、紀平は自身のツイッターに思いをつづった。ぶれない姿勢がそこにあった。

「どの試合も全力で演技することができました」

今季、注目は4回転サルコーへの挑戦だった。練習では着氷させ、フリーの演技直前に構成を決めることが多かった。結局、組み込んだのは昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルで転倒した1本。成功はなかった。世界選手権の“予行演習”だった、2月のチャレンジ・カップ(CC)でも回避。その理由がある。

参考になるのがCCのフリー(別表参照)だ。4回転サルコーに挑戦すれば、(1)の3回転が4回転となる。この演技は全てのジャンプで加点を導き、4回転を抜いた構成としては「90点ぐらい」と自己評価した。

判断の軸は4回転以外のジャンプの調子だった。演技後、4回転で転倒した場合を想定しながら言った。

「氷に座った状態から起き上がる作業がある分、息が上がる。1発目のアクセル((2))でシングル(1回転半)になる確率が高い」

世界一を目指す上で譲れないのが、大技3回転半を2本決めることだ。仮に(2)でミスをすれば、予定していた2回転トーループを付けられず、2本目の(4)を連続ジャンプにする重圧が懸かる。総崩れも考えられ「他のジャンプの自信が100%あれば、動揺せずに(4回転にも)挑戦できる。(当日、4回転以外が)変な感じだったので、やめておきました」と説明した。

ジュニア時代から将来を考え、4回転を練習してきた。大技にこだわりを持つが、固執はしない。GPファイナルを制したロシアの16歳コストルナヤは、4回転0本ながら完成度で勝負していた。刺激になった。

「昨季は『4回転がないとやっていけない』と思った。でも、4回転を跳んで、他が雑になるといけない。確実に(他の)点数が取れる自信がある時にしか(4回転は)やりたくない」

その上でこうも続けた。

「後々、コストルナヤ選手も4回転に入っていくと思う。私もオフはサルコー、トーループの(さらなる)練習に入っていきます」

紀平の考えは一貫している。「どの試合でも『勝つ』ということは、大切にしながらやっています」。目標は22年北京オリンピック(五輪)金メダル。「4回転成功」という派手さはないが、幹は確実に横へ太くなった。残り2年で、そこに花を咲かせる。