元ヘッドコーチ(HC)が部員の頭につまようじを刺すなど暴行を繰り返していたことが判明した日大ラグビー部のOBが5日、日刊スポーツの取材に応じた。練習中、同HCが留学生を厳しい言葉で叱責(しっせき)したり、他の部員を流血させる光景を見たという。同部は公式サイトで声明文を発表し、一部報道にあった「隠蔽(いんぺい)」という表現を否定するとともに「既に当部としても把握の上、適切に対応している」とした。

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取材に応じたOBは、すでに辞任済みの40代の元HCによる行き過ぎた厳しい指導が日常的なものであったとした。「情熱的な方で、部員たちとうまく溶け込んでいるように見えたんですが…。今思うとまるでスクールウォーズの世界」。留学生に対して「そんなプレーするなら、今すぐ国へ帰れ」と声を荒らげることも少なくなかったという。元HCは練習メニューを組み立てるなど、試合に向けた調整を担い、グラウンド内ではひときわ大声を出す存在だったという。時には胸ぐらをつかんだり、尻をたたいたり、暴力により、殴られた部員が流血する事態になったこともあったと証言した。

一方で、練習後には食事に誘うなどもしていたという。OBは、このような行為もあり、在籍中は自身も冷静な判断ができなくなっていたと反省している。「勝つためには厳しい環境下に身を置くことが正しいと思っていたので、在学中は疑問に思うこともなく受け入れていました」。複雑な胸の内を明かした。

4日に一部報道で事態が明るみに出た。取材に応じたOBは、冷静に外から現実を直視し、目が覚めたという。「中にいた時は分からなかったけど、僕の感覚がまひしていた」。許されない暴力などのあしき風習が、根深く残っていたと感じている。「親になった時、しっかりと子どもを送り出せるような部活に変わらないといけません」と語気を強めた。

これまでの指導者主導型の活動を改め、部員主導型に切り替えるきっかけにしてほしいと願うからこその告白。1月に部員の大麻取締法違反(所持)で活動休止を経て発覚した新たな騒動。「後輩に連絡したら『リーグ戦はどうなるだろう』と心配していました。選手たちが犠牲になるのだけはあってほしくないです」と、最後に、切実な声で訴えた。