国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(66)が、新型コロナウイルスの影響で来夏に延期された東京五輪・パラリンピックで観客数を削減する可能性に言及した。韓国民放大手SBSのオンライン取材を受けた様子が27日夜に放送され「安全のため観衆をどれだけ減らすか?」との質問に「満員が理想的だが、現実的には可能ではないだろう。すべての参加者をコロナから保護するための、あらゆる手段を考えている」と答えた。

満員は難しいとの認識とともに、観客数を減らす方法を検討していることを明らかにした。削減の幅については今後の感染状況やワクチン開発の状況による、との見方を示し、具体的な数字まで口にしなかった。

組織委は11月からチケット払い戻しを行うが、延期で観戦が困難になった購入者が対象。大会関係者によると、これとは別に、観客数が削減されることになった場合に備えた、新たな払い戻し実施も水面下では模索している。ただ、現時点では満員を前提に準備している姿勢を崩していない。

政府も五輪を機にインバウンドを復活させたい思惑から、フルスタジアムを目指す施策を打ち出した。30日から順次、プロ野球の横浜スタジアムと東京ドームで観客を8割まで戻して実証実験を行う。組織委もフルであれば入場料収入が確保され、財政的に助かるが、実は内部では慎重論も根強い。ある幹部は「公共交通機関に感染拡大国の観光客が多く乗っていたら住民はどう思うか。個人的には観客の間引きは必要だと思う」と、前のめりな政府の姿勢に疑問を呈した。

一方でチケット部門の関係者は「間引きするシステムの開発は進んでいない。払い戻しだけでも大変だった。開発は相当大変。簡素化と言っている中で高額だ」と語っており、削減の可否も含め、組織委は難しい検討を重ねることになる。