長岡望悠20得点 戦意奪う連射で1勝、五輪救世主

日本対ペルー ペルーにストレート勝ちしチームメートと歓喜する長岡(中央)

<バレーボール:女子リオ五輪世界最終予選>◇14日◇東京体育館

 世界ランキング5位の日本は、同21位のペルーを3-0のストレートで下し、4大会連続の五輪へ好スタートを切った。ウイングスパイカー長岡望悠(みゆ、24=久光製薬)が、強烈なスパイクでチーム最多の20得点を挙げ、チームを鼓舞。初戦で硬くなり、予想外に苦戦した第1セット奪取の原動力となり、快勝へ導いた。今日15日は同26位のカザフスタンと対戦する。

 左の剛腕がうなった。第1セット、一時は17-18と逆転される予想外の苦戦。嫌な流れが漂ったところに、長岡の強烈なスパイクがコート右へ突き刺さった。1点差に追い上げられたセットポイントでは、自らに上がったトスをクロスへたたきつけた。第2セットでは14-6から得意のサーブでエースを奪うなど、1人で3連続ポイント。極め付きは2人のブロックを力ではじき飛ばす豪快なバックアタック。満員の観客を沸かせた立役者は「まず1つ勝てて良かった」と笑みを浮かべた。

 チーム一のパワーヒッターだ。割れた腹筋にごつごつで大きな手はチームメートから「肉だんご」、盛り上がったふくらはぎは「ししゃも」と感嘆される。大分・東九州龍谷高時代はスパイクを打って左手をネットにかけ、強すぎる衝撃に手の甲が折れたこともあった。多くの有力選手を育てた同校の相原監督も「女子選手では見たことがない」と驚く。血管が浮き出る筋肉質の体に、この日も目いっぱい力を込めた。

 パワフルさが意外な悩みでもある。バレー人気が高いタイで、何とファンクラブができるほどの人気選手。対戦すれば、長岡のプレーに同国選手並みの大歓声が上がる。ファンの大半は女性だ。地元テレビ局リポーターのダンヨンさんは「理由は筋肉よ」とニッコリ。クラブハウスには似顔絵を描いたTシャツやクッションが連日届く。長岡は「国境を超えて応援してくれるのはうれしい。でも、そこか、とは思いますね。一応、女子なので…」と胸中は複雑だ。久光製薬でチームメートの石井は「アイドルみたいで、本当に困っているようで…」と苦笑いで思いやった。

 全75得点中20点を挙げた。「目標は五輪の金メダル。目の前の1本に集中して、その積み重ねで勝っていきたい」。あふれるパワーで、チームを連勝街道へ導く。【岡崎悠利】

<長岡望悠(ながおか・みゆ)アラカルト>

 ◆生まれ 1991年(平3)7月25日、福岡県みやま市。

 ◆サイズ 身長179センチ、体重68キロ。

 ◆最高到達点 スパイク310センチ、ブロック298センチ。

 ◆競技歴 小2から姉の影響でバレーボールを始める。大分・東九州龍谷高時代は09年に春高バレー、全国高校総体、国体の高校3冠に貢献。10年に久光製薬に内定、12年のVリーグでは6年ぶりの優勝、MVPとベスト6に選出される。

 ◆日本代表 ユース、ジュニアなど各世代別代表に選出。12年4月、全日本に初選出された。14年8月のワールドグランプリでは銀メダル獲得に貢献、ベストウイングスパイカー賞を獲得。昨年W杯ではサーブランキングで2位。

 ◆由来 名前の望悠の由来は両親の「望みを高く持ち、悠(はる)か大きく成長してほしい」という願いから名付けられた。

 ▼五輪の出場条件 日本は男女とも世界最終予選(東京体育館)の結果で決まる。ともに8カ国が参加、総当たりで対戦し、順位を決定。アジア4チーム中最上位または全体の3位以内に入れば出場権を獲得する。順位は勝敗で決め、並んだ場合は(1)勝ち点(2)セット率(3)得点率の順で決める。勝ち点は3-0または3-1の勝利=3点、3-2の勝利=2点、2-3の敗戦=1点、1-3または0-3の敗戦=0点。