<わたしのツクリカタ:仙台89ERS志村雄彦(2)>
東北ゆかりのスターたちに生い立ちやターニングポイントを聞く「わたしのツクリカタ」。9月開幕のバスケットボール男子の新リーグ、Bリーグ1部東地区仙台89ERSのPG志村雄彦(33)の後編です。仙台高から慶大入学後は、弱小チームを引っ張って大学日本一に導きました。毎年引退を覚悟している本音も明かし、子どもたちへも助言も送ってくれました。
学生時代は人生ですごく大きかった。チームワークです。バスケしか知らなくて、視野を広げるために慶大に入学しました。当時は関東大学リーグの2部。正直、レベルはあまり高くなかった。部員も全国レベルがいなくて、(全国優勝した)仙台高校時代とのギャップがあった。地方から出てきて都会の魅力に誘われ、バスケ以外でつぶれていく選手もいる。絶対にそうはなりたくなかった。当時、大学の2つ上の先輩に全日本代表の佐藤健介さんがいて「どんな環境でも結果を残せ」と、言われました。その中でいかに自分がレベルアップできるかでした。
ただ他の選手はバスケが好きという純粋な気持ちがあって「こいつらと優勝したい」と、1年生の仲間に言っていたみたいなんです。練習が終わってから、みんなで飲みにも行きましたし。
時間はかかるけど回り道はできない。僕はいくら口で言ってもダメだと思って、自分がいつでもコートの先頭に立った。試合でもそういう姿勢を見せました。どこかでみんなのスイッチが入って、4年の時に1部に上がり、リーグ戦とインカレ(全日本大学選手権)に優勝しました。1人だけスーパースターがいても勝てない。みんなが1つになると強いんだなって。そこで得た経験は大きかった。
(その意味でも)Bリーグは今の状況だと相当大変。1部になってうれしい半面、危機感もあります。今まで経験したことがないようなことが待っているのかも。bjのチームは速いと思いますけど、NBLのチームとサイズが10センチぐらい違う。このオフシーズンが非常に大事だと思う。
震災もターニングポイントですね。それまでバスケットは自分がお金を稼ぐ手段と思っていたので。被害にあった地元でもある町、宮城・仙台に何ができるのか。自分がバスケットを続けることが、みんなに対して何かちょっとでも希望になれば、と思ってプレーをするようになりましたね。あの震災で89ERSは活動休止(その年の秋に活動再開)。それが1度沖縄(琉球にレンタル移籍)でプレーして、(11~12季に)再び仙台に戻る決断をした理由になりました。
89ERSには(08年)ドラフト指名されて。大学卒業後は東芝(現東芝神奈川)に入社したけど周りがすごくて、いつも控え。3シーズンで退団。それで地元でやりたいな、と思っていた時に。プレータイムが欲しくて、89ERSも強くて地元で優勝したいという思いがありました。
30歳をすぎて体調管理は意識しますね。休む時は休む。やる時はやる。食事はバランス良く。練習の取り組み方もいろいろ変わりました。外国人とぶつかり合う瞬間(身長160センチで当たり負けするので)を避けるために、体を大きくするトレーニングだけじゃなくて、俊敏性を上げることもやります。タイミングや時期を見てですね。筋トレはシーズン中は2回。オフは週3回。今が一番やらなきゃいけない時ですね。
素直な気持ちですけど、毎年毎年やめるつもりでいます。それぐらい、やり残したことがないようにやっています。次があるとはまったく思っていない。自分が納得のいくパフォーマンスが出せなければ終わりですから。1年1年が勝負。それは何年も前からです。ただ地元で、Bリーグの1部で、バスケができる。またやりたいなという、1つのモチベーションにはなっていますね。
子どもたちに伝えたいのは、本気で取り組んで自分が目標を高く持つこと。たとえ達成できなくて結果が出なくても、そこまで行き着く過程が自分の財産になります。本当にプロになりたいなら、高い目標を立てなければね。達成できた時は、誰もが得られる達成感とは違うものが得られると思う。チャンスがあるのが仙台。バスケのほかに野球(楽天)もサッカー(ベガルタ仙台)もある。僕が子どもの頃にはなかったですから。(おわり)
◆志村雄彦(しむら・たけひこ)1983年(昭58)2月14日、宮城県泉市(現仙台市泉区)生まれ。将監(しょうげん)中央小3年時に、泉中央バスケット教室で競技を始める。将監中では宮城県選抜メンバーとして全国準優勝。仙台高では2、3年と全国高校選抜優勝大会を連覇。3年の国体優勝。慶大を経て実業団の東芝に入社。08年のbjリーグドラフト会議で仙台から1巡目全体7位指名を受けて入団。11年3月の東日本大震災による仙台の活動休止により琉球にレンタル移籍。11~12季に仙台復帰。160センチ、65キロ。
(6月16日付 日刊スポーツ東北版掲載)
この原稿が掲載された日刊スポーツ東北版のバックナンバーを希望される方は、郵便振替で申し込みください。
封筒に必ず「6月16日付東北版希望」と明記してください。なお、東北版のストックは発行から1カ月となります。詳細は下記、URLを参照ください。
https://www.nikkansports.com/koudoku/backnumber.html