サントリー完全日本一 24歳主将流でV字回復

完全Vを喜ぶサントリー選手たち。右からロック真壁、FB松島、SO小野、フッカー中村、CTB村田(撮影・中島郁夫)

<ラグビー・日本選手権:サントリー15-10パナソニック>◇決勝◇29日◇秩父宮

 今季のトップリーグ(TL)を制したサントリーが、2連覇を狙ったパナソニック(同3位)を15-10で破り、4季ぶり7度目の優勝でTLとの2冠を達成した。3-3で折り返した後半に一時逆転されたが、ノートライの計5PGで競り勝った。昨季TL9位から今季は公式戦17勝無敗。V字回復の陰には、2年目で異例の主将に抜てきされたSH流大(ながれ・ゆたか、24)の存在があった。

 ノーサイドのホイッスルが鳴ると流は両手を高々と上げた。喜びをぐっとかみしめるように、仲間とスタンドに駆け寄った。「ファイナルは勝つことが大事。ゲームプランよりも勝ちにこだわった」。ノートライでも主導権を握って守り勝ったことを誇った。

 3-3で折り返したハーフタイム。流は「もう1回我慢しよう」と声をかけた。同15分にキックをチャージされてトライを許して9-10と一時逆転されたが、FB松島に「チームのミス」と声をかけられて「救われた」。従来の空きスペースに素早く展開するラグビーとは違ったが、FWが体を張って近場を攻める我慢強いラグビーで反則を誘った。SO小野が前後半で計5PGを決めた。

 完全優勝の裏には流の存在がある。1年目から目標を持って努力していたとして沢木監督から主将に任命された。帝京大でも主将として大学日本一に導き、勝つ難しさを知っていた。主将となり「遠慮はしない」と意識改革に取り組んだ。「勝つため」にどう行動するかを常に考えた。各ポジションで国際試合の映像を見て、意見を出し合い、全員でイメージを共有。体づくりのためにニュージーランドなどの強豪国のデータをそろえて勉強した。昨季まで完全オフだった水曜日には選手同士で戦術を確認。数年前から練習メニューなどが変わらず停滞したチームに、2年目ながら高いプロ意識を植え付けた。

 首都圏広域営業3部に所属する営業マン。同社OBの沢木監督からは「仕事もラグビーも同じ。大切なのは相手への気配りとコミュニケーション力」と言われてきた。「これまでいろいろ悩み、失敗してきたけど報われた。今日は選手全員がカバーして勝ちきれた。トライゼロだったけど素晴らしい試合だった」。主将としてやり切った表情を見せた。【峯岸佑樹】

 ◆流大(ながれ・ゆたか)1992年(平4)9月4日、福岡県久留米市生まれ。小2でラグビーを始める。熊本・荒尾高を卒業後、帝京大では1年から活躍し、2年から主力として連覇に貢献。4年時には日本代表合宿にも招集された。昨季からサントリーに入団。ポジションはSH。166センチ、71キロ。

 ◆日本選手権優勝回数 (1)神戸製鋼9(2)新日鉄釜石8(3)サントリー7(4)東芝6(5)パナソニック5 ※新日鉄釜石は釜石シーウェイブスの前身。

 ◆最近の日本選手権決勝でのノートライ優勝 05年度の第43回大会で東芝府中とNECがともにノートライで6-6で引き分けて、両チーム優勝となった。前半にPGをNECが2本、東芝府中が1本決めて6-3で折り返し、後半に東芝府中がPGを1本決めて追いついた。

 ◆来季以降の日本選手権 1月の日本協会の理事会で、来季以降の大学チームの出場枠撤廃が決定した。第1回大会から続いてきた「社会人(トップリーグ)対大学」の枠組みは、今季が最後となる。来季のトップリーグは16チームが変則的なリーグ戦で各チーム13試合を戦い、上位4チームによる決勝トーナメントが日本選手権を兼ねた形で行われる。優勝チームは両タイトルを獲得する。