羽生結弦SP3位に発奮「この位置ふがいない」

1回目のジャンプで着氷する羽生(撮影・山崎安昭)

<フィギュアスケート:4大陸選手権>◇17日◇韓国・江陵◇男子ショートプログラム(SP)

 男子SPで、14年ソチ五輪金メダルの羽生結弦(22=ANA)が、97・04点で3位発進した。ミスはあったが、冒頭の4回転ループは自己最高の出来栄え点で演技構成点もトップと、2カ月ぶりの実戦で変わらぬ強さをみせた。米国の17歳ネーサン・チェンが国際スケート連盟(ISU)公認大会で史上3人目の100点超えとなる103・12点で首位。フリーは明日19日に行われる。

 この夜の主役はソチ五輪王者の羽生ではなかった。演技後の会見場で中央に座るのは、米国の若手チェン。羽生は「悔しい。この位置に座っている自分をふがいないと思う」と、静かに憤った。2本目の4回転サルコーがほどけて、2回転に。痛いミスで出遅れた。

 昨年12月のGPファイナルで4連覇を達成した直後に、インフルエンザを発症。その後の全日本選手権を欠場し、「また一からのスタートだった」。1月初めに日本から練習拠点のトロントに戻り、この4大陸選手権に向け、調子を上げてきた。「何ごともなく順調にいった」と体の故障もなく迎えた2カ月ぶりの実戦。「いいコンディションで、ここで滑れることが幸せ」と自信を持ってリンクに立った。

 失敗があっても97点が出せたことが、逆に羽生の強さを示していた。得点が表示されると、自身も驚くほどだった。最初のジャンプ、4回転ループは、跳び上がってから着氷するまでなめらかに弧を描き、今季最高の出来栄え点2・29点をマーク。また「動作の1つ1つをお客さんに向けてやった」と、プリンスの曲に合わせたノリノリの演技で演技構成点でもトップをマーク。5つの要素で出場選手中唯一9点をたたき出した。

 4大陸選手権は11、13年と銀メダルを獲得して以来、ここ3シーズンは3月の世界選手権を重視して回避していた。今季出場を決めたのは、もちろん来年の平昌五輪の会場を試すため。1月の韓国選手権を先に視察したオーサー・コーチからはリンクの状態、雰囲気を写真とともに伝えられていたが、実際に来て感じるものは格別だった。初めて会場を訪れた14日にはソチ五輪と似た青い内観に「幸せ」と感動。外観も自分のスマートフォンで撮り、記録を残した。初めて滑った氷の感触も良く、韓国メディアの取材には「五輪で連覇する確信ができた」と明かしていた。

 「また、もう1回この場所でフリーが滑れる。もっと幸せを感じて滑りたい」。滑走順23番はGPファイナルと同じ「得意な順番」。4回転ループと表現の武器を携え、フリーで勝ちにいく。【高場泉穂】

 ◆羽生結弦(はにゅう・ゆづる)1994年(平6)12月7日、仙台市生まれ。09年ジュニアGPファイナルを14歳の史上最年少制覇。宮城・東北高在籍時の11年にシニア転向。14年ソチ五輪金メダル。昨年12月に男女通じて初のGPファイナル4連覇達成。171センチ。