大橋悠依21歳遅咲きヒロイン400個メ初の日本一

日本新記録で優勝し拳を握りしめる大橋(撮影・清水貴仁)

<競泳:日本選手権>◇第2日◇14日◇名古屋市ガイシプラザ◇女子400メートル個人メドレー決勝

 水泳界に、またニューヒロインが誕生した。女子400メートル個人メドレーで、大橋悠依(21=東洋大)が4分31秒42の日本新記録で初優勝。7月の世界選手権(ハンガリー)代表に内定した。従来を3秒24も更新した記録は、昨年リオデジャネイロ五輪銅メダル相当タイムだった。3年後の東京五輪では、日本女子として、00年田島寧子の400メートル銀以来の個人メドレーメダルを狙う。

 場内がどよめく。21歳の大橋が独特のゆったりとした泳ぎで、ぐいぐいと後続を突き放す。日本記録を2秒以上も上回って後半に折り返す。最後の自由形も勢いは止まらない。従来の記録を3秒24も更新した4分31秒42の日本新記録。リオ五輪代表だった清水、高橋を撃破するどころか、同五輪の銅メダルを超えるタイムで、初の日本一、初の世界切符を得た。

 「水をとらえる素質がある」と平井コーチに見いだされ東洋大に入学。強さの秘密はキックだ。通常は脚の表側を使うダウンキックが主流だが、背面を使って蹴り上げるアップキックで泳ぐ。金メダル23個のフェルプスも得意にした武器に、筋トレで強化した上半身のパワーが加わり、飛躍的な記録短縮につなげた。

 「水泳なんかやめる」。2年前、水泳部の同期、岡田マネジャーに言い放った。原因不明の体調不良で大学1年の終わりから2年秋まで、思うように泳げなかった。結果も出ず、水泳が嫌いになった。自暴自棄になりかけたが、精密検査で極度の貧血が判明した。薬と、アサリなどの鉄分を増やす食事改善で体調は回復。練習が積めるようになると、水泳がまた楽しくなってきた。

 昨年日本選手権は五輪代表こそ逃すも、3位と初の表彰台で自信を得た。今年2月のコナミオープンでは日本記録に0秒69迫る好タイムをマーク。同下旬からは標高2320メートルのスペイン高地合宿に初参加。リオ五輪金メダリスト萩野らと1日1万3000メートルを泳ぎ、スタミナとパワーを増して、大会に臨んでいた。

 池江ら中高生から活躍する女子水泳界にあって、大学4年で初の世界選手権を迎えることは珍しい。「1歩1歩頑張って、メダルにつなげていきたい」。

 遅咲きの21歳は、夏の世界選手権、3年後の東京五輪へ、これまで通り、愚直に努力を重ねていく。【田口潤】

 ◆大橋悠依(おおはし・ゆい)1995年(平7)10月18日、滋賀県生まれ。幼稚園で水泳を開始。彦根東中3年時のジュニアオリンピック女子200メートル個人メドレーで優勝。草津東高を経て14年に東洋大入学。昨年の日本選手権女子400メートル個人メドレーは3位。昨年11月のアジア選手権200メートル個人メドレーで優勝、400メートル個人メドレー3位。趣味は嵐の音楽鑑賞で、好きなメンバーは大野智。173センチ、55キロ。

 ◆世界選手権代表選考 個人の五輪種目は、日本選手権の決勝で日本水連が新たに定めた世界ランク24位前後相当の「標準記録」を突破して2位以内なら代表決定。ただしリオ五輪メダリストで日本勢最上位が当該種目に出場すれば代表とするため萩野の男子200メートル、400メートル個人メドレー、坂井(早大)の同200メートルバタフライは残り1枠。個人の非五輪種目とリレー種目は別の基準で選考する。