羽生結弦 見たことない!フリー後半4回転3本成功

男子フリーでジャンプを決める羽生(撮影・山崎安昭)

<フィギュアスケート:国別対抗戦>◇第2日◇21日◇代々木第1体育館◇男子フリー

 男子の世界選手権王者の羽生結弦(22=ANA)が、フリーで史上初めて演技後半の4回転3本に成功し、200・49点で1位となった。初めて4回転5本を入れる演技構成で臨んだ。後半には4回転トーループ-1回転ループ-3回転サルコーの高得点を稼げる連続技に初挑戦して着氷。平昌五輪での連覇に向けて確かな手応えを得て今季を締めくくった。国別対抗で日本は計81点とし、前日からの首位を守った。

 前日提出した演技予定表では、最後から2番目のジャンプはトリプルアクセル(3回転半)からの3連続ジャンプだった。だが、羽生は前向き(アクセル)ではなく、後ろ向きに踏み切った。4回転トーループ-1回転ループ-3回転サルコー。これまでの自己最高の4回転サルコー-3回転トーループの基礎点を0・44点上回る、4回転からの3連続ジャンプを試合で初めて着氷した。「1点でも2点でも多く稼ぎたい時、自分の気持ちが乗っている時に使える」。演技全体は完璧ではなかったが、新しい3連続ジャンプを得て「ある程度満足することができた」と笑った。

 冒頭の4回転ループに続く2本目の4回転サルコーが1回転になった。そのミスをカバーするために、3連続ジャンプに挑んだわけではない。SP7位に終わり、深夜4時ごろまで寝付けなかった前夜、4回転5本を跳ぼうと決めた。SPで失敗した4回転ループの残像が頭から離れず、眠れない。何度も起きてイメージトレーニングを続けた。そんな中で、もう1人の自分がささやいた。「こんな悔しいなら、もう1回(4回転を)やっちゃえよ」。負けじ魂に火が付いた。

 4回転5本の大胆な挑戦で史上初の“勲章”もついてきた。基礎点が1・1倍になる演技後半に4回転ジャンプ3本を跳んだのは史上初。4回転を次々と跳ぶ宇野ら年下に負けじと、今季最後の演技で成功させた。男子に4回転時代を到来させた五輪金メダリストは「誰が初めて、とかではなく、素直にうれしい」と充実感をにじませた。来季、フリーで4回転5本を飛ぶかは「考えなくては」と言うにとどめたが、来季のプログラムを作る上での選択肢を増やした。

 故郷仙台市には14年ソチ五輪金メダルの記念碑が建てられた。16日の除幕式では「五輪金メダルは競技人生で最高峰といえるものかもしれませんが、僕にとっては通過点」と言った。まだ足りない。66年ぶりの五輪連覇というレガシー(遺産)を残す戦いが、これから始まる。【高場泉穂】