秋田のバドガールズ米元、田中は世界8位上昇中

ゲーム形式の練習でシャトルを必死に追う北都銀行・米元。右は田中

 バドミントンのインド・オープン(OP)女子ダブルスに優勝した北都銀行(秋田)の米元小春(26)、田中志穂(24)組が、昨季以上の責任感と向上心を持つ。青森山田高出身の2人は日本A代表として2月から海外を転戦して五輪、世界選手権に次ぐ格付けのスーパーシリーズに出場。その1つインドOPを初制覇し、世界ランキングはコンビを組んで最高の8位に上昇した。越えなければいけない壁など、2人が思いを語った。

 米元と田中は今、21日にオーストラリアで開幕する世界国別対抗戦スディルマン杯に向けて調整している。昨年12月13日に日本B代表からA代表に昇格。今年2月から海外を転戦し、3月26日~4月2日まで行われたインドOPで、初めてスーパーシリーズ(SS)に優勝した。日本勢の女子ダブルスSS制覇は08年北京五輪4位の末綱聡子(36)、前田美順(31)組(ルネサスSKY=現再春館製薬所)、16年リオデジャネイロ五輪金メダルの高橋礼華(27)、松友美佐紀(25)組(ともに日本ユニシス)に続き3組目だった。

 米元 ここで優勝したのは自信になる。

 田中 1回は優勝したかった。今後はベスト4にコンスタントに入りたいと思う。

 米元は大会直前の練習で右手人さし指を負傷した。その頃、大相撲春場所で稀勢の里が左肩を負傷しながら優勝した。北都銀行・原田利雄監督(53)から「稀勢の里になれ」と、メールでハッパをかけられた。

 米元 稀勢の里の優勝は知らなくて(笑い)。(ケガを)言い訳にせず、どういう状況でもベストを出すつもりでした。

 コンビを組んだのは14年11月。原田監督は「お互いにパートナーがいなくなって、たまたま」と明かす。1週間後の全日本総合選手権で8強入りと、いきなり能力の高さを示した。スピードが持ち味の米元が前衛で、後衛の田中はショットの多彩さが武器。昨年の全日本総合選手権は準優勝し、1部に当たる昨季のS/Jリーグは、エースダブルスとして北都銀行最高成績の3位の原動力になった。敢闘選手賞も獲得した。

 田中 以前より我慢強くなった。

 米元 (結成当初は)2人ともフィジカルが弱くて。ファイナルゲームになるとスタミナ切れしていた。

 試合を経験しながら課題に気付き、克服に努めた。日本B代表などの合宿で高レベルの選手と練習したことも大きい。連係は向上し、ラリーが続いても根負けしなくなった。

 成長著しい。20年東京五輪への期待も膨らむ。しかし冷静に実力を見つめる。

 米元 自分たちのレベルではまだまだ。

 田中 今のレベルではいけない。そう甘くない。

 2人が口をそろえるのは、越えなければならない壁があるからだ。世界ランク1位の「タカマツ」こと高橋、松友組。インドOPに2人は出場していなかった。米元、田中組は決勝で敗れた16年全日本総合選手権など、過去4回対戦して1度も勝っていない。A代表では一緒に練習する。「タカマツ」は五輪後も隙を見せず個々に課題を見いだし、それに向き合う。その姿勢に刺激を受けた。だからこそ、強く意識する。

 米元 (五輪で)金メダルを取っても強い気持ちを感じる。これからの大会ではライバルペア。しっかり勝負しないといけない。

 田中 勝たないと(SSより上の)プレミアとかに優勝はできないと思う。

 高橋、松友組のほかに15年世界選手権3位の福万尚子(25)、与猶くるみ(24)組、4月のマレーシアOPを制した福島由紀(24)、広田彩花(22)組(いずれも再春館製薬所)と、日本の女子複にはライバルが多い。今後も参戦するSSなどで、結果が伴わなければA代表から外される。だが複の層の厚さが競争心を生み、米元、田中組の力をさらに伸ばす可能性がある。

 田中 (B代表に)落とされる恐怖はない。上のレベルで戦えることを意識している。

 米元 ここ(A代表)で勝負していく気持ちが強くなった。

 SS優勝でつかんだ自信は、確信へと変わった。世界ランクは5月11日現在、再び8位をキープしている。北都銀行では、今季もエースダブルスとして11月に開幕するS/Jリーグが控える。

 米元 自分たちがポイント源になること。

 田中 (昨季は6勝1敗で3チーム並び)マッチ率の差で負けた。1セットにこだわっていきたい。それが世界にもつながる。

 日本ユニシス、再春館製薬所などのように、バドミントンだけに専念できない。銀行業務と両立する。

 田中 会社を長い間、空けていてもお花見に誘ってくれるんですよ。

 米元 会社ではたくさんの人から声をかけてもらっている。それは自分たちにとってはプラス。

 仕事をこなしながらの競技生活は、ハンディとは思っていない。行員との絆と温かい応援。2人は感謝の気持ちを常に心に秘める。だから、まだまだ強くなれる。【久野朗】

 ◆米元小春(よねもと・こはる)1990年(平2)12月7日、広島市生まれ。9歳からバドミントンを始める。青森山田高から09年に三洋電機(11年からパナソニック)入社。13年パナソニックの解散により北都銀行へ移籍。嘉村健士(トナミ運輸)と組んだ混合複は12、16年の全日本総合選手権優勝。双子の姉陽花はS/JリーグACT SAIKYO(山口)に所属。166センチ、54キロ。右利き。

 ◆田中志穂(たなか・しほ)1992年(平4)9月5日。熊本県八代市生まれ。8歳からバドミントンを始める。青森山田高から法大に進学し、4年時の全日本学生選手権(インカレ)で単複ダブル制覇。世界学生選手権は複に優勝。内定選手として、北都銀行では14~15季にプレー。15年に入行。160センチ、56キロ。右利き。

 ◆スーパーシリーズ 世界バドミントン連盟が07年から開催している年間トーナメントシリーズの名称。五輪、世界選手権に次ぐ格付け。11年から数大会がスーパーシリーズ(SS)からSSプレミアに格上げされ、全英OPやマレーシアOPなどが当たる。「プレミア」は通常のSSより賞金額が多く、世界ランキングポイントも上がる。