21歳是永金、五輪追加種目「リードもっと知って」

<ワールドゲームズ:スポーツクライミング>◇23日◇ポーランド・ウロツワフ◇リード男子

 20年東京五輪の追加種目でワンツーフィニッシュだ。リード男子で21歳の是永敬一郎が金メダル、20歳の波田悠貴(ともに埼玉県連盟)が銀メダルを獲得した。15年からアジア選手権連覇中の是永は、強豪の北米、欧州勢が出場するW杯や世界選手権などの国際大会で初のタイトル。リードは制限時間内に到達した高さを競う種目で、東京五輪では複数の課題での完登数を競うボルダリング、登る速さを競うスピードを含む3つの複合種目で争われる。

 金メダルを見つめる是永の鼻の下は血でにじんでいた。両手を離して空中に飛び出し、次のホールド(突起物)をつかむ「ランジ」と呼ばれる動きで、顔面を壁に打ちつけたという。「めちゃくちゃ痛かった。名誉の負傷ですね」と笑みを浮かべた。

 クライミングとの出合いは小学5年の時。親に勧められて埼玉・川口市のジムで体験し、とりこになった。日体大進学後は児童スポーツ教育学部に通いながら「めちゃくちゃ多い」と自負する練習量で、武器のスタミナを強化。W杯のリードでは16年7月のスイス大会の2位で初めて表彰台に立ち、今月のフランス大会も2位。日本代表の安井博志ヘッドコーチは「読みが良く、テクニックがある」と身長160センチに秘めた才能を高く評価する。

 五輪の追加種目に決まるまで、スポーツクライミング界ではワールドゲームズ(WG)が最高峰のタイトル。日本協会の幹部によると、協会ではWGの報奨金を世界選手権より上に設定している。今回のWGには、W杯リードで通算3勝、ボルダリングで同じく2勝を挙げ、3種目の総合力では世界トップのショーン・マコール(カナダ)が出場した。勢いのある実力者がそろう国際大会で、3位のマコールら強豪を抑えて日本勢が1、2位を独占したことには価値がある。

 陸上競技に例えるなら、ボルダリングは瞬発力が問われる短距離走で、リードは前腕の耐久力が求められる長距離走。東京五輪の追加種目入りを機に国内でボルダリング人気が高まる中、是永は「リードも知ってもらいたい」と願った。

 ◆ワールドゲームズ 4年に1度、五輪翌年に開催される国際総合大会で「第2の五輪」として注目されている。ボウリングやダンススポーツ、スカッシュ、綱引き、ラクロス、相撲など五輪で採用されていない競技が行われる。81年に米国で第1回大会が開催され、第10回の今年は公開競技4を含む全31競技を実施。