大橋悠依の刺激は幼なじみの桐生祥秀、銀で彦根旋風

昨年1月に滋賀県彦根市の成人式に出席した大橋(右)と陸上の桐生

<水泳:世界選手権>◇第11日◇24日◇ブダペスト◇女子200メートル個人メドレー決勝

 初出場の大橋悠依(21=東洋大)が、日本新記録の2分7秒91で銀メダルを獲得した。決勝で自己記録を2秒以上更新する驚異的なラップで競泳メダル1号。同種目で15年カザニ大会の渡部香生子以来2人目のメダルに涙を流した。滋賀県彦根市で育ち、隣の中学校に通っていた陸上桐生祥秀(21)と大学も同じで、成人式も一緒。ともに世界で戦う同級生に刺激を受けて、一気に東京五輪のメダル候補に躍り出た。

 端の8コースで順位もタイムも分からなかった。大橋は、150メートルで自己最速ラップを2秒も上回った。「腕も手もちぎれてもいい」。最後の自由形で力を振り絞った。日本新の2分7秒91で銀メダル。電光掲示を見て右拳で水面をたたいた。「まさかという気持ちが大きかった。タイムにもビックリした」。5位今井と抱き合って涙を流した。

 個人メドレーの400メートルが本職。その前に200メートルで銀。準決勝はラスト50メートルを流して全体の8位だった。「意外とぎりぎりでびっくりした」。決勝は173センチの長身を生かして全開モード。苦手の平泳ぎも「肩の力を抜いて手を出すのを早くした」。本番会場での初練習では2階にある表彰台を見て「いいなあ。あそこからプールが見られたらいいなあ」と口にしていた。その願いを実現させて「いい眺めでした」と美女スイマーは笑った。

 “幼なじみ”が刺激だ。滋賀県彦根市で育った。決勝の日は、元祖ゆるキャラ「ひこにゃん」の靴下をはくのが験担ぎで、ブダペストにも1足持参している。そんな21歳が、彦根市立東中時代に全国大会で活躍すると、彦根市の表彰式で顔を合わせる、同い年の男の子がいた。車で約10分、隣の彦根市立南中の桐生祥秀だった。地元では水泳と陸上で有名な中学生として、互いに顔見知りだった。

 ともに東洋大に進学。昨年1月の成人式では隣の席に座って式典に参加した。「SNSとかちょくちょく絡んだり。学校の学食で会ったりします」。そんな「ジェット桐生」は昨年のリオ五輪で男子400メートルリレーで銀メダルを獲得した。その姿に「私も頑張ります」と発奮。桐生と同じ銀メダルを獲得した。3年後の東京五輪では「彦根水陸ダブルメダル」も視野に入れている。

 リオ五輪後に飛び出した新星が、初の世界大会でメダル獲得。最終日の30日には、本職で今季世界ランク1位の400メートル個人メドレーだ。大橋は「自分にできる最大限の努力をして、持ち味を生かしてメダルをとりたい」。遅咲きの21歳が、2個目のメダルに照準を合わせた。【益田一弘】