橋本壮市が金 6大会連続守った、羽賀と約束守った

柔道世界選手権代表

<柔道:世界選手権>◇8月30日◇ブダペスト

 日本の勢いが止まらない。男子73キロ級橋本壮市(26=パーク24)が決勝でリオデジャネイロ五輪銀メダルのオルジョイ(アゼルバイジャン)を破り、初出場初優勝を飾った。同級の日本勢の優勝は10年から6大会連続。東京五輪に向けて、同学年で五輪王者の大野将平らが激戦を繰り広げる争いに遅咲きの男が加わった。日本勢は大会3日間で金5個を含むメダル8個と快進撃が続いている。

 遅咲きの苦労人が世界王者に輝いた。橋本は決勝でオルジョイの怪力に何度も体を宙に浮かせたが、踏ん張った。延長1分42秒。一瞬の隙を突いて体落としで技ありを奪った。「よっしゃあ」。ガッツポーズを繰り返し、感情を前面に出した。「何度も心が折れかけたけど、『絶対に俺が世界王者になる』と言い聞かせて闘った。東京五輪に向けてやっとスタートが切れた」としみじみと語った。

 東海大相模高3年の時には同級生で100キロ級代表羽賀龍之介(旭化成)らと全国選手権、金鷲旗、高校総体の3冠を達成した。将来を有望視され、東海大に進学するも肘などのけがや、81キロ級からの階級変更で伸び悩んだ。実業団のパーク24に入り、世界選手権3連覇の海老沼匡から「柔道の心得」を学んだことが転機となった。意識改革して柔道への向き合い方が変わり、研究熱心になった。今大会には袖釣り込み腰から体落としなどに移行する新技、「橋本スペシャル3」を完成させて臨んだ。

 昨夏のリオデジャネイロ五輪では、羽賀の銅メダル獲得を現地で見て「負けていられない」と強く思った。今大会前の2週間前の練習では左足首の靱帯(じんたい)を2本断裂。決勝の延長戦突入前には右手人さし指の爪がはがれた。逆境に追い込まれたが「世界一になって日本に帰ろう」と、2日に登場する羽賀との約束を果たそうと耐えた。

 同じ階級には大野ら強豪が待ち受ける。「もっとやれる。大野に勝って東京五輪に出場し、優勝することを思い描きながら3年間を過ごしたい」。世界王者は出発点。苦労人橋本の本当の闘いはこれからだ。

 ◆橋本壮市(はしもと・そういち)1991年(平3)8月24日、静岡県生まれ。6歳から柔道を始める。神奈川・東海大相模高-東海大。16年グランドスラム(GS)東京を制覇。17年の全日本体重別選手権、GSパリ、GSエカテリンブルクで優勝。世界ランキング1位。得意技は背負い投げ。170センチ。