羽生の挑戦「誰もがルッツ期待する」逆転へここから

男子SPでコンビネーションジャンプに失敗する羽生(撮影・山崎安昭)

 14年ソチ五輪金メダリスト羽生結弦(22=ANA)が、平昌五輪シーズンの本格到来を告げるGP初戦で、SP94・85点で2位発進となった。10-11年シーズンのシニアデビュー以降、GP初戦での優勝は7季連続でなし。今日21日、4回転ルッツを入れた自己最高難度のフリーで「スロースターター」のジンクスを拭い去る。

 2位でも、羽生の心は波立たなかった。「最後の表情を見て分かると思うんですけど…」。演技後に笑みを浮かべ、舌をペロッと出したのは悔しさとともに手応えがあったからだった。 冒頭の4回転ループは、回転不足で着氷が乱れた。トリプルアクセルは美しく決めて出来栄え点で3点満点の加点を得たが、後半の4回転-3回転の連続トーループは着氷した瞬間に右足がわずかに深く倒れ、後ろに転倒した。それでも「感覚的には悪くなかった」と収穫の部分を強調した。

 9月の今季初戦オータム・クラシックでは違和感を抱える右膝を守るため、4回転ループを回避するなどジャンプの難度を下げた。それでいてSPで世界最高得点をマークしたが、今回のSPこそやりたい構成だった。「自己ベストから20点以上も低いが、手応えとしては大きなミスではなかった。いろんな修正点も見つかりつつ、明日につながるいいステップだった」。SPの衣装は袖と腰から胸にかけた青色のグラデーション部分を前の試合より少し濃くしていた。「まだまだ改良しますよ」。衣装と同様、ここからプログラムの濃度を高めていく。

 今日21日のフリーでは、試合で初めて4回転ルッツを入れる自身最高難度のジャンプ構成に挑む。「誰もがルッツを期待すると思うし、僕自身もルッツを決めて、ノーミスをすることを期待して明日に向けて過ごす。勝ちに向かって貪欲に頑張りたい」。逆転勝利へ強い意思をにじませた。

 GPファイナルは13年から4連覇中だが、GP初戦に限るとシニア過去7季で1度も勝てていない。首位チェンとは5・69点差。「点差もそんなに離れていないし、何よりも思い切って挑戦する場だと思っている」。心を弾ませフリーに臨む。【高場泉穂】

 ◆GPシリーズ 95-96年シーズンに「チャンピオンシリーズ」の名で始まった。大会数などを変えながら、03~04年シーズンから現在のロシア、カナダ、中国、日本、フランス、米国の6カ国で定着。毎年10月から11月にかけて6週連続で行われる。6大会のうち、各選手・組(ペア、アイスダンス)が出場できるのは最大2大会。順位に応じたポイントの合計で、上位6人(組)がGPファイナルに出場できる。今年のGPファイナル(12月7日開幕)は名古屋で開催される。