トップ4目指し東北勢参戦バドミントンS/Jリーグ

練習でスマッシュを打ち込む七十七銀行・河崎

 バドミントンの1部に当たるバドミントンが4日に開幕する。東北勢は女子に2チームが参戦。3季ぶりに1部に復帰した七十七銀行(宮城)は、ダブルスの河崎綾佳(26)が左膝の大けがを乗り越えてコートに立つ。昨季チーム最高の3位に躍進した北都銀行(秋田)は今季、コーチから昇格した元男子五輪代表の佐々木翔監督(35)が指揮を執る。それぞれ、上位4チームが進出する「トップ4トーナメント」を目標に日本一に挑戦する。

<七十七銀行>

 左膝に黒いサポーターを着用して、入行4年目の河崎は練習に励んでいる。膝は「まだ100%じゃない」と言うが、その表情は明るい。「まずコートに立てることが感謝ですし、うれしいです」。9月の全日本社会人選手権で復帰して2勝した。七十七銀行の複の中心選手の1人が、3季ぶりの1部リーグに間に合った。

 昨年9月、ベルギーでの国際大会の試合中に左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した。チームが優勝した2部に当たる日本リーグ、昇格を決めた1、2部入れ替え戦など1シーズンを棒に振った。昨年12月に手術を受け、リハビリの毎日。「今までは(試合に)出るのが当たり前。悔しくて。自分が出たい」と、何度ももどかしくなった。

 だがベンチで試合を応援することで、心の中は変わった。今季は「出られない人の分も頑張る」と仲間への思いを胸に秘める。左膝負傷前には、荒木茜羽(21=現岐阜トリッキーパンダース)とコンビを組み、のちに日本A代表となった北都銀行の米元小春(26)田中志穂(25)組を2度破った実績を持つ。前衛でスピードあるプレーに加え「取れそうでない球を、転がってでも取りに行く」(河崎)しぶとさ。だれとコンビを組んでも力を発揮する。

 草井篤監督(42)は「復帰した河崎が軸。筋力も戻ってきた。彼女も今年こそは、の思いを持っている」と期待をかけた。2複1単のリーグ戦。河崎は先陣を切る第1複での出場が有力で「勢いが大事。1部に上がってきたばかりなので、ぶつかって行く」と言った。開幕は4日のNTT東日本(東京)戦。日本最高峰の舞台で、大きな光を放つ時が来る。【久野朗】

 ◆河崎綾佳(かわさき・あやか)1991年(平3)7月5日、滋賀県大津市生まれ。小学4年からバドミントンを始める。大津商高から龍谷大に進学。12年全日本大学選手権複3位。14年に七十七銀行入行。14、15年の全日本総合選手権複16強。156センチ、52キロ。家族は両親、姉と弟。弟駿輔(23)は日本リーグの丸杉(岐阜)に所属。

 ◆七十七銀行バドミントン部 92年創部。S/Jリーグに名称変更する前の日本リーグ1部には、03年昇格。翌04年の4位が過去最高成績。12年から3年連続最下位と低迷し、14年の入れ替え戦に敗れて15年に2部降格。今季再昇格。練習拠点は七十七銀行中山体育館で、バドミントン専用コートが6面ある。

<北都銀行>

 佐々木監督は言う。「入って1年たちますが、『佐々木翔が入ってチームは変わった』と思う」。昨季のS/Jリーグは3位、自身が初めて率いた7月の全日本実業団選手権は準優勝と、ともに過去最高の成績を収めた。この1年間のチームの成長を実感し、成績も満足している。

 「最初に入ったとき、負けても選手は『コーチの責任だ』と解釈していた。選手に『フリーでウエートをやって』と言ったら『やったことがありません』と言われた」。そこで各選手に、トレーニングするべき箇所、方法を提示し、後は選手に任せた。そして選手の自立心も芽生えた。体幹を鍛えるために自ら、サッカー日本代表の長友が愛用する「フローイン」という器具を購入した村山祐美(29)は「チームの雰囲気は変わった」と語った。

 2度の五輪を経験した男は、教え子も五輪代表へ-。10月22日のスーパーシリーズ・デンマークオープン準優勝の女子ダブルスの米元小春(26)田中志穂(25)ら日本代表5人を擁する。部員9人全員が、代表選考を兼ねる、27日から東京で開幕する全日本総合選手権に出場するのは、創部47年目にして初めてだ。

 佐々木監督は現役時代からの哲学である「清く、正しく、内面から美しく」を夏以降、選手に指導してきた。この哲学を実践できるのが、若手が多く素直な選手も多い古巣の北都銀行だと考え、8年ぶりに指導者として帰ってきた。「ずるをして勝っていいわけではない。この流れができたら、優勝もできると思うし、オリンピックも目指せると思いますね」

 今季の第1目標は、来年3月に仙台で開催される、リーグ4強が争う「TOP4 TOURNAMENT」出場だ。さらなる飛躍のシーズンにしたい。【秋吉裕介】

 ◆佐々木翔 1982年(昭57)6月30日、北海道・北斗市生まれ。関東第一高時に00年高校総体ダブルス優勝。12年ロンドン五輪シングルス8強。14年全日本選手権優勝、アジア選手権準優勝。2度目の五輪の16年リオ五輪後引退し、北都銀行のコーチに就任。

 ◆今季のS/Jリーグ 8チームの総当たりによって順位を決めていた昨季までの大会方式を変更。今季は男女ともリーグ戦の上位4チームが「トップ4トーナメント」に進出。ゼビオアリーナ仙台で来年3月24日に準決勝、翌25日に決勝と、トーナメント方式で優勝チームを決定する。来季からはチーム数を2つ増やし、10チームを2ブロックに分けたリーグ戦になる。