平野歩夢に感化、阿部一二三「東京五輪オール一本」

同世代のスノーボード平野歩夢らの活躍を見て「東京五輪は圧倒的に勝って金メダル」と抱負を書きガッツポーズする阿部一二三(撮影・浅見桂子)

 平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)が閉幕し、2年4カ月後には20年東京オリンピック(五輪)が開幕する。柔道男子66キロ級世界王者の阿部一二三(20=日体大)は、スノーボード男子ハーフパイプ(HP)銀メダルの平野歩夢(19)に刺激を受けた。豪快な一本を追求する“柔道の申し子”は女子52キロ級の妹、詩(17=兵庫・夙川学院高)と「兄妹で金メダル」を目指す。

 20歳の世界王者は平昌五輪が閉幕し、決意を新たにした。16年12月のグランドスラム(GS)東京大会から無敗を誇り、圧倒的存在感を示してきた。甘いマスクから出る1つ1つの言葉が、自信に満ちていた。「平昌が終わり、次は自分の出番。重圧がある中で勝ちきるのが王者。東京五輪まで勝ち続ける」。

 1歳年下の平野の「おとこ気」に感化された。絶対王者ショーン・ホワイト(米国)との一騎打ち。

 阿部 けがから復活して、あのパフォーマンスは「すごい」の一言。平野選手は最後まで攻め続けて男らしかった。自然相手の採点種目の難しさも知った。ただ、競技者としてはやっぱり金。相手が絶対王者であろうと銀は悔しいと思う。同世代に負けてられない。

 世界王者となり昨年のGS東京大会を制したことで、既に今年9月の世界選手権(バクー)代表に内定している。先月は約3週間、単身で初の欧州武者修行を敢行。ドイツなどを回り言葉が通じない中、あえて孤独になって心身を鍛えた。

 阿部 世界王者になりライバルから研究され、自分も対応策を考える。組み手や技の幅も広がり、ライバルのおかげで成長もしている。不安要素はけがぐらいしかない。

 その絶対的な自信の裏には「準備力」がある。最低週2回は出稽古で国学院大で軽量級、国士舘大で重量級の選手らと乱取りをする。「練習量は誰にも負けない」と自負する。柔道は五輪が閉幕する度にルール変更されるが、阿部は冷静に捉える。「難しく考えない。相手を投げて、投げられなければよい」。そのために「今、何をすべきか」と常に逆算して考える。

 兄の背中を妹の詩が追う。GS東京大会、今月のGSパリ大会と連覇し、目標とする東京五輪での「兄妹で金メダル」も現実味を帯びてきた。男子66キロ級と女子52キロ級の試合は同じ日の予定で「イメージもできている」と言う。

 阿部 東京五輪ではオール一本で金メダル。平野選手のHPではないけど、豪快なかっこいい柔道で、圧倒的な力で多くの人を魅了したい。東京五輪はまだ通過点。

 一切、隙を見せない“柔道の申し子”は歩みを止めない。【峯岸佑樹】

 ◆阿部一二三(あべ・ひふみ)1997年(平9)8月9日、兵庫県生まれ。6歳から柔道を始める。兵庫・神港学園高2年の時、17歳2カ月の史上最年少で講道館杯を制覇。16年12月のGS東京大会から無敗。17年世界選手権優勝。世界ランキング1位。得意技は背負い投げと袖釣り込み腰。尊敬する人は野村忠宏。趣味は買い物。好きな食べ物は肉。家族構成は両親、兄、妹。168センチ。