ダニエル太郎、アメコミから力/独占インタビュー

ツアー初優勝後、初のインタビューに答えるダニエル太郎(撮影・吉松忠弘)

 【ローマ10日=吉松忠弘】男子テニスで、世界82位のダニエル太郎(25=エイブル)が、先週のイスタンブールオープンで自身ツアー初優勝。日本男子にとって4人目のツアー制覇の快挙だ。アメコミのスパイダーマンやアイアンマンから力を得て、総合格闘技のトレーニングを取り入れる。食事もおいしいものには目がない。人生の楽しみ、その幸せを大事にした先に、その優勝が待っていた。ダニエルが、優勝後初めて、日刊スポーツの独占インタビューに答えた。

 優勝の瞬間、天に腕を突き上げたポーズが話題を呼んだ。大好きなアメコミのポーズとも言われた。

 ダニエル スパイダーマンとかアイアンマンがお気に入り。イスタンブールでもネットで過去のマーベル作品をずっと見ていた。ジョークや風刺など、いろんなものが詰まっていて、高いエネルギーがもらえる。

 イスタンブールからローマに入り、オフの1日、最新作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」を堪能した。

 ダニエル もちろん、優勝はすごくうれしい。でも、その勝った瞬間のうれしさはすごく短くて、負けた時の痛さの方が苦しい。だから、優勝とか勝つことだけを夢見ていると、すごく苦しいテニス人生になる。

 練習やトレーニングも同じだ。昨年の3月、左手首を痛めた。その時に、父ポールさんが、総合格闘技UFCの元王者マクレガーが推奨しているトレーニング法を勧めてくれた。

 ダニエル 体操、ヨガ、ダンスなどを合体したようなもの。どのスポーツが強くなるというわけではなくて、体の能力を引き出して、人生のクオリティーを高める動きを学べる。

 動画に、タモリのイグアナの物まねのような動きをアップしている。大会前も、両親のいるアムステルダムで、そのトレーニングでリフレッシュした。

 ダニエル 今では和式トイレでしゃがめるようになった。海外のテニス選手は誰もできないですよ。

 何でも楽しいと思ったら取り入れる。そのきっかけは、16年出場したリオデジャネイロ・オリンピックだった。

 ダニエル 日本の有名なアスリートが、本当に苦しそうな顔をしていた。笑顔が少なくて。僕には楽しい1週間だったから、すごくショックだった。

 もちろん、五輪が最高峰で、4年に1回しか、その場が巡ってこない他競技の特質も理解している。それでも驚いたという。

 ダニエル 結果がついてこなければ苦しい。ただ、ついてこないからといって、自分がやっていることがだめとはならない。そのプロセスが、いつか幸せになると信じている。それが楽しいし、五輪でそれを学べた。

 だから、優勝でも狂喜乱舞というわけではない。

 ダニエル 最終的な夢は、自分の人生が幸せになること。普段の生活で、本当にシンプルなことを楽しむ。練習をやり過ぎない、おもしろい映画を見る、おいしいレストランを見つけるなど、そういったことの積み重ねが大事。そして、それがテニスの結果にもつながったんだと思う。4大大会に優勝するためにだけやってたらつまらない。

 熱血・松岡修造、天然・錦織圭、仙人・杉田祐一に続く日本男子の星は、まさに自然体。ダニエル流のテニス人生が、幕を開けたばかりだ。