内村航平10連覇で世界切符 東京へ「つながった感」

最終種目の鉄棒の演技を終えガッツポーズする内村(撮影・鈴木みどり)

<体操:NHK杯>◇20日◇東京体育館◇男子個人総合

 全日本選手権3位の内村航平(29=リンガーハット)が、持ち点との合計258・629点で逆転優勝し、10連覇を達成した。6種目とも着地を決めるなど、ほぼ完璧な出来。再び「キング」の強さを見せつけ、2位の白井健三(21=日体大)とともに世界選手権(10~11月・ドーハ)代表に決まった。

 美しい内村が戻ってきた。5種目をほぼ完璧にこなし、首位谷川と0・564点差で迎えた最後の鉄棒。「自信がありました」。屈伸コバチ、カッシーナ、コールマンと3連続の離れ技をゆったりと余裕を持って決め、最後は伸身ルドルフから微動だにしない着地。同種目最高の14・966点で谷川翔と白井を土壇場で抜き、逆転での10連覇。大歓声を浴びながら「ようやく自分らしい演技ができた」と、喜びに浸った。

 乱れぬ着地が、勝利を引き寄せた。「美しい体操」をモットーとする内村にとって着地は大事な要素。だが、16年のリオ五輪後、休養やケガなどが重なり、6種目をこなすだけで体力が消耗し、着地にまで意識が届かない状態が続いていた。だが、ここにきて順調に練習を積み「着地を止められるだけの体力がついてきた」。全日本後の3週間、着地に意識を集中した練習を重ね、この日の安定した演技につなげた。

 昨年の世界選手権は跳馬の予選で左足首を負傷し、無念の棄権に終わった。今回はそのリベンジとともに、団体での東京五輪出場権を取りにいく戦いとなる。エースとして変わらぬ期待がかかるが「29歳。しんどいので種目を減らしてほしい」とおどけた。

 「全日本で負けたからこれがある」。負けたことで自分の体操を見つめ直し、勝利を「新鮮」と感じることができた。「ここで個人総合を勝ちとれなかったら、東京は難しくなるんじゃないかと思っていた。つながった感がある」。2年後の東京オリンピックへ、強くて美しい内村の体操はまだまだ続く。【高場泉穂】

 ◆世界選手権代表選考 今年の世界選手権は団体総合で上位3カ国、地域が20年東京五輪の出場枠を獲得する。男子は、全日本選手権予選、決勝の合計を持ち点に争う5月のNHK杯の上位2人を選出。3人目はNHK杯5位以内、4人目は12位以内が条件で、6月の全日本種目別の結果も踏まえて貢献度の高い3人を選考する。