日大指導者は選手になすりつけ、全否定で遠のく解決

騒動の経緯を懸命に語る日大アメフト部井上コーチ(左)の隣でほおをかく内田前監督(撮影・横山健太)

 アメリカンフットボールの反則問題がふりだしだ。6日の定期戦で関学大QBを負傷させた日大の内田正人前監督(62)と井上奨DLコーチ(30)が、23日に都内の大学本部で会見。反則した3年DL宮川泰介選手(20)が前日22日に「監督、コーチにケガさせるよう指示された」と説明したが、2人は「指示はしていない」など真っ向否定した。内田前監督は常務理事を謹慎し、その後は学内の第三者調査委員会に従うとしたが、問題は再び平行線で解決は先延ばしになった。

 2人は関学大QB、関学大フットボール部、宮川選手のそれぞれに対し、謝罪の言葉を口にして頭を下げた。その後は「責任」の言葉は繰り返したが、あとはことごとく宮川選手の前日会見での説明を否定し続けた。前夜に日大がファクスで出したコメントをなぞっただけだった。

 問題の最初の反則はパス失敗後の無防備なQBへケガをさせたタックル。宮川選手は「試合前日に井上コーチから監督にお前を試合を出せるか聞いたら、QBを1プレー目でつぶせば出してやると言われた」と言っていた。内田前監督は「信じてもらえないかもしれないが、私の指示ではありません」。真っ向否定で始まった。

 井上コーチも「QBをつぶせと言ったのは事実だが、ケガをさせてこいと指示していない」と否定した。宮川選手が井上コーチから「定期戦はなくなっていい。QBがケガして秋出られなければこっちの得」と言われていた。井上コーチは「過激なことは言った。一言一句覚えていないがケガさせる目的でない。思い切りやらせるためにいろいろと言ったが」と話した。

 宮川選手が日大豊山高2年時に井上コーチが監督になって以来の関係がある。その恩師は「優しい子で成長が止まっていた。レベルを上げたかった。それが重圧になり、(反則は)前が見えなくなったのか。私の人間性、未熟さと反省している」と言った。さらに突っ込まれると言葉に詰まり、考え込む場面もあった。

 昨年は27年ぶりで大学王者になった。内田前監督は原因を「4年がよくやった。みんなついていき、受け継いだと思ったが…。宮川も日本代表になれる選手だが」と指導の甘さと言いながら、宮川選手に責任を負わせるような説明だった。

 内田前監督は1度会見したが、関学大への謝罪帰りに空港で臨時対応だった。謝罪、会見など対応の遅さには「相手の監督から電話が来ると思った。文書が来たのでこうやるのかと。これも私の責任」とした。宮川選手の会見同席には「お誘いがなかった」。

 会見の最後に内田前監督は常務理事職は謹慎すると表明した。その後の進退については学内に設置された第三者調査委員会に委ねるとした。日大職員の井上コーチはコーチ辞任を「考えている」。宮川選手の真摯(しんし)な会見で解決に向かうかと思われた騒動。再び平行線で日大の幕引きの思惑が見え隠れする会見だった。

 ◆アメフト悪質反則問題 日大の宮川選手が6日に東京都調布市で行われた関学大との定期戦で、パスを試みた後で無防備だった関学大QBの背後から激しくタックルして腰などを負傷させた。内田前監督は19日に負傷した選手らに謝罪し、責任は自身にあるとしてアメフト部監督を辞任した。負傷選手の父親は大阪府警に被害届を提出し、警視庁が捜査。宮川選手は22日に記者会見を開いて謝罪し、反則については内田氏と井上奨コーチからの指示に従って行ったと説明した。