ボルダリング野口啓代「東京で優勝できてよかった」

決勝の第2課題で攻める野口(撮影・滝沢徹郎)

<スポーツクライミング:W杯ボルダリング第5戦>◇最終日◇3日◇東京・エスフォルタアリーナ八王子◇男女準決勝、決勝

 第一人者の野口啓代(29=TEAM au)が決勝で3完登し、自身3度目のワールドカップ(W杯)3連勝を果たした。W杯通算21勝目となり、女子ボルダリングW杯歴代最多の22勝に王手をかけた。16、17年シーズンは未勝利だったが、3種目(ボルダリング、リード、スピード)の複合で争われる20年東京オリンピック(五輪)に向けて進化。準優勝の野中生萌(21)をボルダリングの年間総合ランキングで逆転し、首位に立った。男子は楢崎智亜(21)が準優勝、杉本怜(26)が3位に入った。

 首位で迎えた決勝の最終第4課題。今季から待機所でも順位が表示されるようになり、野口は「完登しないと優勝できない」と集中して臨んだ。スタートから1手1手、丁寧にホールド(突起物)をつかむ。トップホールドにゆっくりと右手をかけると、何度も壁をたたき、ガッツポーズで喜びを爆発させた。まさに会心の一撃(1度目の試技で完登すること)だった。

 16、17年シーズンとW杯で勝利がなく、1度は競技から退くことも頭をよぎった。「でも、このままでは終われない」。東京五輪種目に決まったことをモチベーションに、昨秋からボルダリング、リードにスピードを加え、3種目の練習に本格的に取り組んできた。今季からスピードのW杯にも出場。モスクワで行われた第2戦では11秒61で自己新記録も更新した。

 3種目の経験が、進化につながった。今季2月のボルダリング・ジャパンカップでの優勝を皮切りに、W杯第1、2戦で3位、第3、4戦では全ての課題を完登して優勝。第5戦の今大会でも準決勝まで全課題を完登した。「スピードの瞬発力や爆発力、リードの持久力や保持力が、ボルダリングにも生きた。1年前、2年前には登れなかった課題が登れるようになった」と実感を口にした。

 東京五輪は「新しい目標であり夢」。「東京五輪では、日本の大観衆の前で緊張感があると思う。今回こうして東京で優勝できて良かった。3種目ともボルダリングと同じくらい安定した選手になりたい」と2年後の姿をイメージした。【戸田月菜】

 ◆野口啓代(のぐち・あきよ)1989年(平元)5月30日生まれ、茨城県龍ケ崎市出身。東洋大牛久高卒。小学5年の6月に家族旅行で訪れたグアム島のゲームセンターでフリークライミングを体験し、ジムに通い始める。小学6年で全日本ユース選手権優勝。08年のボルダリングW杯モンタウバン大会(フランス)でW杯日本女子初優勝。9、10、14、15年と4度W杯総合優勝。昨年の世界選手権は3位。165センチ。

 ◆大会方式 八王子大会は予選に男子91人、女子68人が出場。男女ともA、B組に分かれて5課題に取り組み、各組上位10人が準決勝に進む。準決勝、決勝は4課題。制限時間は予選、準決勝が5分、決勝が4分で時間内なら何回でもトライ可能。決勝は6人が進出。

 ◆東京五輪のスポーツクライミング 今大会で行われているボルダリングと、リード、スピードの3種目の総合で争う。ボルダリングは高さ約3~5メートルの壁にホールド(突起物)が設置され、複数の課題(コース)に挑んで完登した数を争う。リードは12メートル以上の壁を制限時間内に到達した高さを競う。スピードは高さ15メートルの壁を登り、その速さを競う。東京五輪では各種目順位を掛け合わせたポイントの少ない選手が上位。日本はボルダリング世界最強国でリードもトップレベル。スピードの強化が五輪メダルへのカギ。