山根会長“独裁”の後遺症、辞任の意思確認できず

辞任表明を終え自宅に到着し、報道陣からの質問に答えようとするも口をふさがれる山根氏(中央)(撮影・前田充)

 日本ボクシング連盟の山根明会長(78)が辞任した。8日、大阪市内で声明を発表し、「私は本日をもって辞任を致します」と表明した。不正判定など、日本連盟の数々の疑惑を告発する騒動が起きて13日目。独裁を築いたトップの最後は、質問にも答えず、疑惑の回答も行わない一方的なものに。固辞してきた会長職を退く決断はしたが、幹部もその対象が分からない現状を露呈。組織としても疑問符がつく退場劇だった。

 ボクシングの1ラウンドは3分。大阪市内の会場で山根会長が「おはようございます」と第一声を上げてから、最後に「申し訳ありません」と頭を下げ、上げた瞬間でちょうど3分だった。いつもの強気、怒気はなく、声も小さく、足元はおぼつかない。弱々しく、あやふやな会長としての「最終ラウンド」だった。

 「私は本日をもって…、辞任を致します。その理由は、(昨夜の理事会で)最後に理事の皆さんから会長一任ということを言われたので、私自身が、えー…、家に戻って、わが嫁にあたる、いま現在再婚をしている嫁に先に相談し、辞任をしたいと言われたので、言いました。『私はどうあっても死ぬまで会長の面倒を見ていくから、今楽になってください』と、ということを言われたので私は決意をしました」

 前夜、約3時間の臨時理事会。議決権を持つ理事30人中25人以上が辞職の意思を示し、会長にも退陣を迫った。ただ、応じない。代わりに決断の猶予を求め、一任の形で持ち帰った。辞任に至る最後は妻の一言。

 「選手の皆さまには、このような問題があったことに関して法人の会長として申し訳ない。どうか選手の皆さん、将来、東京オリンピック(五輪)に参加できなくても、その次の五輪もあります。頑張ってください」と騒動の最大の被害者の選手へ謝罪したが、決して選手最優先と受け取れない物言いだった。

 「日本ボクシングを再興する会」からの告発状には、助成金問題以外は全否定してきた。「山根マジック」と呼ばれる不正判定疑惑などは残る中、この日は質疑応答の時間がなく、声明だけでは疑いは晴れない。会場を去る際に非を認めるか問われ、「非はありません」と言い切った。

 現理事は今後、総辞職する見込みだ。同会長の「辞任」が会長職を指すのか、理事なのか、連盟を離れるのかは不明。声明を終えて自宅に帰宅した際には、謎のピースサインで無言を貫いた。都内で会見した吉森副会長も「確認を取っているわけではありません」と答えに窮するなど、意思確認すらできない独裁体制の後遺症があらわだった。今後は会員として残る可能性もあるとした。

 釈然としない幕切れ。この対応で、今後選手を守る改革はできるのか。これが幕切れとも言い切れないところに、異常体質の一端がにじみ出た。