瀬戸大也、憧れ北島康介にサインねだって8歳の誓い

男子200メートルバタフライで金メダルを獲得した瀬戸はVサイン。後方は矢島(撮影・山崎安昭)

<競泳:パンパシフィック選手権>◇第2日◇10日◇東京辰巳国際水泳場◇男子200メートルバタフライ決勝

 男子200メートルバタフライで瀬戸大也(24=ANA)が、1分54秒34で大会連覇を果たした。予選を1分55秒57の全体3位で通過。決勝では自己ベスト1分54秒03に0秒31差に迫るタイムで勝利した。昨年世界選手権銅メダルの力を発揮した。02年横浜大会で「レジェンド」北島康介氏に憧れた少年が、自国開催Vで「競泳ニッポン」を担う次世代にバトンをつないだ。

 右拳で力こぶを作った。瀬戸は、会場の大歓声に応えるように右手で水面をたたいた。「声援を聞いて絶対に負けられないと思った。自国開催で金メダルがとれてよかった」と喜んだ。

 昨年の世界選手権銅メダリストは「このメンツならば実力は自分が上。絶対に勝たなきゃいけない」。前半から先頭争い。150メートルを2番手で折り返し、ラスト50メートルで逆転勝ち。前日9日の400メートル個人メドレーは後半に失速して3位。この日は予選後の睡眠を1時間半から2時間に伸ばして「体を一から作り直した」。他種目に挑戦してきた経験を生かし、しっかり勝った。

 02年、横浜。8歳だった瀬戸は、16年前の日本開催だったパンパシ横浜大会を見に行った。北島氏の姿に憧れ、午前の予選終わりに選手宿舎の場所を、うわさで聞いた。「プールにいるよりもホテルの方がチャンスがある」。到着するとエレベーターから玄関までファンがずらり。行列の間から会場に向かう当時19歳の北島氏を見つけた。夢中でTシャツにサインをもらって、写真撮影。瀬戸は「今、考えると午後の決勝前だったと思うんです。自分なら『レース終わってからにしてよ』と思うところだけど、そこでくれたんです」。北島氏は「それ、覚えてないんだよね~」というが、8歳の少年は「僕も世界で活躍するような選手になりたい」と、心に誓った。

 現在の瀬戸は可能な限りサインの求めに応じる。「次の(日本開催)パンパシは16年後。僕のサインをもらった子が出るかもしれない」。かつて自分が北島氏に憧れたように、自国開催で金メダルにこだわった。

 瀬戸は「子供たちのヒーローに少しは届いたかな」とうれしそうに笑った。満員のスタンドに、テレビの前に「競泳ニッポン」の系譜を継ぐ新世代が出てくる、と信じている。今日11日は200メートル個人メドレー。400メートルで後れを取ったライバルのケイリシュ(米国)と萩野に対して、リベンジを狙う。【益田一弘】