セーリング女子初「よしよし」コンビが悲願の金獲得

 悲願の金メダルだ。セーリングの世界選手権は9日、デンマーク・オーフスで行われ、女子470級の吉田愛(37)、吉岡美帆(27=ともにベネッセ)組が金メダルに輝いた。セーリング日本女子が世界の頂点に立つのはオリンピック(五輪)を含めて初めて。吉田、吉岡組は16年リオデジャネイロ五輪5位入賞。“よしよし”コンビが、20年東京五輪の金メダル最有力候補に名乗りを上げた。男子同級では磯崎哲也(26)、高柳彬(21)組が銀メダル。

 セーリングの日本女子がついに世界の頂点に立った。五輪、世界選手権を通じて、3度の銀メダルが最高だったが、ついに、その壁を破った。3度の五輪を経験した吉田でさえ「震えるぐらい緊張したけど、フィニッシュした時はうれしすぎて言葉が出なかった」。

 抜群の安定性だった。7日までの7レース中、第1レースこそ12位と出遅れた。しかし、第2レースは首位で波に乗った。第2~7レース全てで1桁順位をマークし、上位10艇が進めるメダルレースにトップで進出。メダルレースは5位だったが、総合成績で金メダルを獲得だ。

 吉田は、06年世界選手権で銀、08年には世界ランク1位になったトップセーラーだ。しかし、2度の五輪で力を出せず。金を目指す相棒として、12年ロンドン五輪後の試乗会で、吉岡に声をかけた。「体が大きくて磨けば光ると思った」。

 吉岡は立命大ヨット部で、卒業とともに引退を考えていた。しかし、誘いを受けて吉田の自宅に泊まり込み、徹底的に世界の技術をたたき込まれた。「会えるだけでも雲の上の人。誘っていただいて、もう1度、頑張ろうと思った」。

 吉田も12年11月に結婚。「リオ五輪が最後と決めていた」。翌13年、東京五輪が決定し「絶対に出たい。そして、今度こそメダルが取りたい」と、気持ちが変わった。リオ後の17年6月に長男ルイ君を出産。「東京を狙うには、今しかなかった」。

 吉田が産休の間、吉岡は他の選手とペアを組んだ。17年10月のワールドカップ(W杯)蒲郡大会で復帰した吉田は「(吉岡が)成長していて驚いた。以前は受動的だったけど、今は自分から動く」。相棒の成長が、今回の快挙に結びついた。東京まで残り2年。まずは、同じ会場で開催される9月のW杯江の島大会で、再び頂点を狙う。

 ◆吉田愛(よしだ・あい)1980年(昭55)11月5日、八王子市生まれ。旧姓近藤。小1でヨットを始め、08年に鎌田奈緒子と組んだ「コンカマ」で世界ランキング1位。北京、ロンドン、リオと五輪3大会連続代表。最高位は16年リオ五輪の5位。17年6月に長男ルイ君を出産。161センチ、58キロ。

 ◆吉岡美帆(よしおか・みほ)1990年(平2)8月27日、広島県生まれ。芦屋高でヨットを始め、立命大を経て13年に吉田愛とペアを結成。同年世界選手権初出場で、10位に食い込んだ。初出場の16年リオ五輪で5位入賞。クルー。177センチ、68キロ。

 ◆470級 セーリングの1種目で、名称は競技で使用する全長4・7メートルの2人乗り小型ヨットに由来する。76年モントリオール五輪から正式種目。3枚のセールを用いており、乗員の役目は、操舵(そうだ)とメインセールを担当するのがスキッパーで、船の傾きと他のセールを担当するのがクルーだ。日本では最も成績がいい種目で、96年アトランタ五輪で女子の重由美子、木下アリーシア組が銀メダル、04年アテネ五輪で男子の関一人、轟賢二郎組が銅メダルを獲得している。