池江金「隣もバテてた」100バタ46年ぶり快挙

金メダルの池江(中央)は銀メダルのダリア(左)、銅メダルのマキオンと表彰台で笑顔を見せる(撮影・山崎安昭)

<競泳:パンパシフィック選手権>◇第3日◇11日◇東京辰巳国際水泳場◇女子100メートルバタフライ決勝

 女子100メートルバタフライで池江璃花子(18=ルネサンス)が日本記録の56秒08をマークし、主要国際大会初の金メダルを獲得した。前半からリードを奪い、自身が持つ記録を0秒15更新。昨年世界選手権銀のエマ・マキオン(オーストラリア)と銅のケルシ・ダリア(米国)に競り勝った。日本女子の主要国際大会での同種目優勝は72年ミュンヘン・オリンピック(五輪)の青木まゆみ以来46年ぶりになった。20年東京五輪でのメダル獲得が現実味を帯びてきた。

 表彰台で、君が代を聞いた。目をうるませた池江は「泣くのをこらえたけどすごくうれしかった。(君が代は)東京五輪を連想させる状況。2年後の五輪で流したい。めちゃめちゃ楽しいです」と、とろけるような笑顔を見せた。

 浮き上がりは3番手も186センチのリーチを生かして先頭。前半は世界記録を上回る25秒89。日本記録56秒08での優勝に左拳を握りしめた。リオデジャネイロ五輪なら銀メダル相当の好タイムで、今季世界最高タイム。「最後はすごくバテて抜かれたらどうしようと思ったが、隣もバテてた」。

 試合前から「予選からトップは譲らない」と三木コーチに宣言。本命種目、しかも世界記録保持者サラ・ショーストロム(スウェーデン)不在の中で、負けられない。予選は全体トップの56秒90。バスに乗る前に同コーチと約5分の「青空ミーティング」。代表活動で選手エリアに入れない同コーチと「ラストで体の上下動を少なく。前半50メートルは楽に入ること」と2点を確認して、タイムを上げた。

 今年2月ごろ、自宅の洗面所脇の壁にA3の紙が張り出された。池江が泳いでいる各種目の世界記録が手書きされたものだった。

 「東京2020で 世界記録」

 50メートルバタフライ 24秒43

 100メートルバタフライ 55秒48

 50メートル自由形 23秒67

 100メートル自由形 51秒71

 200メートル自由形 1分52秒98

 200メートル個人メドレー 2分6秒12

 母美由紀さんが「私が見たいなと思って。ドライヤーで髪を乾かすのって、結構、時間がかかるし」と理由を説明する。かつてはリビングの壁にジュニアオリンピックの標準記録や優勝タイムを張っていた。中学3年だった15年に同種目で日本記録57秒56を出してから張り紙はなくなったが、3年ぶりに解禁。「璃花子がどう考えるかは関係ないんです。私が張りたいから張っている」と美由紀さん。ただ潜在意識にワールドレコードが日々、刻まれていることは確実。池江は4月の日本選手権後に「世界記録を目指していく」とよく口に出すようになった。

 世界記録55秒48まで0秒60。「まだちょっと遠いかなと思うけど、55秒台に入れば近づく。サラ選手のいいところは単純にパワーで泳いでいる。技術を下げないでパワーをつけたら、勝てると思う。サラ選手を抜かしてから、金メダル宣言をしたい」。18歳が東京で堂々のメダル候補になった。【益田一弘】

 ◆女子100メートルバタフライの日本勢メダル 五輪は、72年ミュンヘン大会青木まゆみの金メダルだけ。世界選手権は、73年青木の銅、98年青山綾里の銀、01年大西順子の銅とメダル3個。パンパシは、91年漢人陽子の銅と、青山が97年に銀、99年に銅を獲得している。世界選手権とパンパシで金メダルはない。