いざ19年W杯 釜石復興スタジアムきょうオープン

釜石鵜住居復興スタジアムのバックスタンド(手前)には地元の間伐材を使用したウッドシートが並ぶ

 19年ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の舞台の1つになる釜石鵜住居(うのずまい)復興スタジアム(岩手)が今日19日、開場イベントとなる「オープニングDAY」を開催する。釜石シーウェイブス対ヤマハ発動機のメモリアルマッチ、ともに日本選手権7連覇を達成した新日鉄釜石OB対神戸製鋼OBのレジェンドマッチなど、さまざまな記念イベントが行われる。同スタジアムは7月下旬、東日本大震災で甚大な被害を受けた釜石市の鵜住居地区に完成。国内12会場の中で唯一の新設競技場で、来年9月20日開幕のW杯では予選ラウンド2試合が行われる。

 東日本大震災の津波被災地で唯一のW杯開催地になる釜石鵜住居復興スタジアムが、世界中から受けた支援への感謝と復興に取り組む姿を発信する。鵜住居川河口の公園整備として建設された。震災時、同場所にあった鵜住居小と釜石東中は大津波で3階まで浸水。だが、約600人の両校生徒全員が迅速に避難し、世界的に注目された。その跡地に建設された新スタジアムは、防災避難と震災復興のシンボル的な役割も担う。

 「コンパクト」を基本理念にした球技専用の災害対応スタジアム。地下には緊急時の飲料水にもなる100トンの耐震性貯水槽と、トイレなどに活用できる120トンの貯留槽を備える。さらにメインスタンド背後の裏山にある全長300メートルほどの山林作業道を緊急避難路として活用。河口域には大型水門や防潮堤を設け、防災機能を高めている。

 自然との調和も考えた。空から見る公園全体の形状は楕円(だえん)のラグビーボールをイメージ。メインスタンドとバックスタンドの常設6000席中4990席は、木製のウッドシートだ。昨年5月の山林火事で焼け出された地元の杉の木(間伐材)を有効利用した。3階構造の管理事務棟の骨組みは東京駅八重洲口と同じ構造で、特殊加工した200メートル×60メートルの白い屋根は、大海原を航海する船の帆や羽ばたく翼をイメージ。ほかにも随所に木材を使用し、「和の心」を強調している。

 メイングラウンドの広さは約130メートル×80メートル(ピッチ120メートル×70メートル)で、W杯やスーパーラグビー開催の国際基準をクリアする。ピッチには基底部にマイクロファイバーと天然コルクを使用した国内初の補強型天然芝(ハイブリッド芝)を導入。保水力に優れ、横ずれが発生しにくく、ハイレベルなパフォーマンスが期待できる。

 メインスタンド正面には、臨場感を味わえる約1000席の可動席を設置。W杯時は仮設スタンドを含め約1万6000人が収容可能になる。近くには震災後不通になっている鵜住居駅(JR山田線)も来年3月に再開され、宮古~釜石間の復旧と同時に三陸鉄道に転換予定だ。

 W杯開催に向けて、まだ工事中のサブグラウンドの整備や、電光掲示板、照明設備、メディアセンター等の設置が必要になる。管理事務棟3階の展望デッキでは緑のピッチの先に、海と山に囲まれた復興途上の鵜住居地区が一望できる。地元関係者は「感謝の気持ちを伝えたい。子供たちの心の財産になる」とW杯を心待ちにしている。【佐々木雄高】