体操宮川紗江「恐怖」協会からのパワハラ告白の理由

会見に臨む体操の宮川選手(撮影・足立雅史)

体操リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)女子代表の宮川紗江選手(18)が29日、都内で会見し、日本体操協会に強い不信感を示した。指導を受ける速見佑斗コーチ(34)が、宮川選手への暴力行為で協会から無期限登録抹消などの処分を受けたが、「処分の重さは納得できない」と軽減を要望。引き続き同コーチの指導で東京オリンピックを目指すことを望むとともに、日本協会幹部からパワハラを受けたことを明かした。

明るい宮川選手に、笑顔はなかった。多くのテレビカメラと報道陣を前に、厳しい表情のまま口を開いた。「私の言葉で真実を語るため」と会見の理由を説明。「厳しさの中に優しさ、楽しさがあり、東京五輪に向けて頑張ってきました」と、まずは小学5年から指導を受ける速見コーチへの変わらぬ信頼を口にした。

暴力行為は認めた。顔をたたかれたり、髪の毛をつかまれたが「練習に身が入らない時など、命に関わるような場面。悪いのは自分だし、仕方ないと思っていた」。しかし、報道された「馬乗りでの殴打」「髪を持って引きずり回し」は否定。「ケガしたり、体を痛めたことはない」と強調した。時期も「1年以上前まで、今はない」。協会の処分に「重すぎる。納得できない」と不満を表した。

「協会の方が恐怖で、パワハラと感じた」と告白。7月15日、暴力認定のために東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で塚原千恵子女子強化本部長(71)に暴力の有無を聞かれた。「ありませんと答えたけれど、何度も聞かれた。最後はキレ気味に『あったんでしょ』と。すごく怖かった」と明かした。

協会への不信感は16年末、東京五輪に向けて発足した強化プロジェクト参加を見送ったのがきっかけだった。塚原本部長から電話で「申し込まないと協力できない。五輪にも出られなくなるわよ」と伝えられたといい、「恐怖だった」と話した。意欲のある有望選手を集中強化するのが目的だったが、宮川選手にその意図は伝わっていなかったようだ。

「プロジェクトに入らないと優遇されず、海外遠征も行けない。NTCの利用も制限された」と宮川選手。今年6月には追加で参加したが、今は脱会を考えているという。40年以上前から日本代表の指導に携わる塚原本部長らへの不信感は強く「大きな力が、私とコーチを引き離そうとした。権力を使った暴力だと感じる。同じ被害を受けている選手もいる」と訴えた。

現在は速見コーチと連絡をとりながら、1人で練習を続けている。ただ、心身ともに状態は悪く「みんなに迷惑をかける」と、世界選手権(10月、ドーハ)の代表候補は辞退する意向。願うのは速見コーチの早期復帰と協会の強化体制の刷新。「東京五輪の金メダルへ、今回の件はロスになる。でも、コーチが戻ることを信じて練習し、一からやり直したい」。18歳は強い決意で話した。

◆宮川紗江(みやがわ・さえ)1999年(平11)9月10日、東京都西東京市生まれ。2歳から体操を始める。14年ユース五輪種目別跳馬銅メダル。15年世界選手権床運動4位、団体5位。16年リオ五輪団体4位。149センチ。血液型B。