宇野昌磨「新ルール効果」で首位発進 自己新迫る

男子SPで躍動感ある演技を見せる宇野(撮影・PNP)

<フィギュアスケート:ロンバルディア杯>◇13日(日本時間14日)◇イタリア・ベルガモ◇男子ショートプログラム(SP)

男子SPで平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)銀メダルの宇野昌磨(20=トヨタ自動車)が今季初戦に臨み、104・15点を記録し首位発進した。新ルール適用のため今季前に得点記録がリセットされ、SP100点台は一番乗り。昨季までの自己ベスト104・87点に迫る好演技だった。冒頭の4回転フリップは3・74点の出来栄え点(GOE)を導き「新ルール効果」も出た。5位の友野一希(20=同大)とともに、今日15日のフリーに向かう。

宇野の代名詞は、今季初戦からしっかりとした評価を得た。新SP「天国への階段」の冒頭。スムーズな流れで踏み切った4回転フリップは練習通り、きれいに着氷した。リンクの脇で7人中3人のジャッジが4点、残る4人が3点の加点をモニターに打ち込む。宇野は「靴ひもを強く結びすぎて、滑った直後はどうなるかと思った」という心境だったが、決めきった。

続く4回転-2回転の連続トーループ、演技後半のトリプルアクセル(3回転半)も成功。3つのスピンは当たり前のように最高評価のレベル4を獲得した。「いい演技をしたいと思っていた。みなさんが見て足りないところがあれば、指摘していただければと思います」。宇野らしい不思議な「お願い」が出るほど表情は明るく、「練習通りが出せた。ちょっとうれしい」と手応えをつかんだ。

確定したスコアにも質の高さは示された。演技全体の流れを生んだ4回転フリップは3・74点の加点。昨季までの旧ルールでは7段階だったため、加点の上限値は3点だった。それが最大5点の11段階となり、新たな境地を体験した。夏場の時点で「加点が大きく変わるので、新しいジャンプを入れるより、跳べるジャンプを確率良く、きれいにそろえられるようにしたい」と見据えていた新ルール。“自己ベスト”に迫りながらも「ステップをもっとエネルギッシュにいくべきだった」と課題を挙げ、伸びしろもたっぷり残した。

中1日で迎えるフリーは演技時間が今季から30秒短縮され、ジャンプやスピンが矢継ぎ早にやってくる。オフに取り組んだ体力強化の成果は「フリーが終わっていないので、大きな声では何も言えないけれど、体力面は不安はない」。その上で「これでフリー終わって疲れていたらすごく恥ずかしいので、今は何も言えないです」と笑った。普段通りの姿を見せれば、恐れるものは何もない。【波平千種通信員】

<宇野昌磨 一問一答>

-今季最初の試合でジャンプ全てを成功させた

宇野 (SP104・87点の自己記録だった)去年も一応ジャンプを全部降りたけれど、そこまでうれしくなかった。それは、練習があまりできていない中で(いい演技が)できてしまったから。それが今年は練習通りが出せた。

-昨季は2位が多いシーズンだった

宇野 1ミスから2ミスっていうのを去年ずっと続けていて、そこからなかなか抜け出せなかった。ノーミスでできないことが、1位につながっていない要因。今年は去年よりも、頻繁にできるようにしたい。

-夏場に包帯を巻いていた右手の具合は

宇野 大丈夫です。治りました。完治まではいっていないけれど(地面に)ついても痛くない。手は問題ないです。

◆ルール改正 国際スケート連盟(ISU)は6月の総会でルール改正案を承認した。男女ともに大きな影響があるのは、出来栄え点(GOE)が以前の7段階から11段階に拡大された点。一方でジャンプの基礎点が下がり、4回転ジャンプの失敗で減点されるより、質の良い3回転ジャンプ成功で加点を得る方が点数が高くなるといった現象も起こる。羽生は「さらにいい質の、きれいなジャンプを目指したい」と変更を前向きに捉える。

男子はフリーが30秒短くなり、ジャンプの数も8本から7本に減少。だが、宇野が「すごくバタバタする」と語るように、ジャンプが1本減る以外の要素は変わらないため、選手の「ゆとり」はなくなるだろう。

演技後半のジャンプの基礎点1・1倍はSPで最後の1つ、フリーで最後の3つに限定された。平昌五輪女子でジャンプ全てを後半に跳んだザギトワ(ロシア)のような戦略はとれなくなる。男子フリーでは繰り返し跳ぶことができる4回転ジャンプが1種類に制限され、数多くの種類を跳べる選手が優位な模様だ。