五十嵐カノアに大歓声「鳥肌たった」サーフィン

男子2回戦16組 豪快なライディングを見せる五十嵐(撮影・滝沢徹郎)

<サーフィン:ワールドゲームス>◇第2日◇17日◇愛知県田原市・ロングビーチ

東京オリンピック(五輪)サーフィンの金メダル候補、五十嵐カノア(20=木下グループ)が、鮮烈な日本代表デビューを果たした。東京五輪「前哨戦」のワールドゲームズ第2日が17日、愛知・田原市のロングビーチで行われ、初めて日本代表として出場した五十嵐が男子1回戦に登場。2本目に9・17の高得点をマークすると、2回戦では得意のチューブライディングも披露して3回戦へ1位突破。日本のファンの前で圧倒的な力を見せ、チームを勢いづけた。

砂浜を埋めた1000人以上のファンから、大歓声が沸き起こった。朝8時、五十嵐は1回戦最終32組で登場。同組イグナシオの8点で「頭の中でカチッとスイッチが入った」。絶好の波に乗ると豪快な3つの技で9・17。チームメートの日の丸が大きく揺れた。

多くの観客に期待されて「鳥肌が立った。プレッシャーもあった」と言う。それでも、日本選手で唯一世界最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)を転戦するメンタルの強さで「緊張がなければ、モチベーションにならない」と言ってのけた。午後の2回戦では波のトンネルを抜けるチューブも披露。得点こそ6点台で「ちょっとダメ」と苦笑いしたが、危なげなく3回戦に進み「まだ40%。エアーとか、とってある技はある」と不敵に言った。

そのライディングを見ようと、早朝からファンが集まった。五十嵐が移動すると人の波も動いた。日本人の両親のもとカリフォルニアで生まれ、18歳で米国選手としてCT入りした。日本代表での東京五輪出場のため、3年目の今季から日本人としてCT出場。日本代表入りも果たした。

東京五輪出場資格がCT選手に与えられることが決まり、五十嵐は有力候補になった。今の調子を維持すれば、目標の「東京五輪の金メダル」も近づく。もっとも、その理想はさらに高い。「1番は次の世代にサーフィンの素晴らしさを伝えること。金メダルの価値よりも大切」と話す。

サーフィンの五輪実施が決まる前の16年5月、五十嵐はニューヨークで行われた国際オリンピック委員会(IOC)国際サーフィン連盟(ISA)などの会合に呼ばれた。世界で活躍する「日本人」サーファーとして意見を求められ「東京五輪でサーフィンをやってほしい。ぜひ出たい。金メダルがとりたい」と熱く語った。願い通り実施が決まり、日本代表での出場も現実味を帯びてきた。あとは金メダル。「この大会が東京五輪につながる」という五十嵐の目標は、個人と団体の2冠だ。【荻島弘一】

◆五十嵐カノア(いがらし・かのあ)1997年(平9)10月1日、日本人の両親のもと米カリフォルニア州生まれ。3歳でサーフィンを始め、15年18歳でCT入り。16年総合ランキング20位、17年17位、今季9位。カノアはハワイ語で「自由」。弟キアヌもサーフィン選手。180センチ、75キロ。

◆東京五輪出場への道 男女各20人で、国別出場枠は最大各2人。男子10人、女子8人は19年のCT上位選手。各国2人で人数に達するまで資格を与える。19年ワールドゲームズで米国を除く4大陸の最上位選手男女各4人。20年ワールドゲームズの上位男子4人、女子6人。残る男女各2人は、19年パンアメリカン大会の優勝者と開催国枠。ただし、開催国枠はCT、ワールドゲームズで出場が決まらなかった時のみ。