遠藤元五輪相が語る不祥事防止策「特別扱い解消」

インタビューに応じる遠藤利明元五輪相(撮影・三須一紀)

スポーツ界の不祥事が止まらない。パワハラ、暴力、危険反則、ドーピング…。2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの開幕まで2年を切る中、超党派の国会議員からなるスポーツ議員連盟が、調査・指導権限がないスポーツ庁に、権限強化を図る法改正を視野に入れる。同議連の「スポーツ・インテグリティ(高潔性)の体制整備の在り方検討プロジェクトチーム(PT)」で座長を務める遠藤利明元五輪相(68)に、その具体案について聞いた。

-文部科学省設置法を改正し、スポーツ庁の権限を強化する場合、権限の範囲はどの程度になるか

遠藤氏 公益法人を所管する内閣府とスポーツ庁が連携して、スポーツ団体の不祥事を指導できる仕組みはどうか検討している。

-同庁は公益法人の取り消しなどを勧告できたり、スポーツ団体の資格取り消しなどの強い権限を持つことになるのか

遠藤氏 そこまでは考えていない。強烈な権限だとスポーツ団体が萎縮してしまう。調査・指導権限をスポーツが専門のスポーツ庁に持たせ、改善命令や公益認定取り消し処分などは、同庁から報告を受けた内閣府が判断する。そのために連携を図れるようにしたい。

-具体的に同庁内に組織をつくるイメージか

遠藤氏 今、(スポーツ庁所管の)日本スポーツ振興センター内にある暴力行為等に関する第三者相談窓口を、あらゆる不祥事に対応できるような組織に強化する手がある。イメージは厚生労働省の医療事故調査支援センター。国土交通省の外局で完全な独立機関の運輸安全委員会ほどの権限とまでは考えていない。

-日本オリンピック委員会(JOC)やスポーツ団体は政治介入により1980年モスクワ五輪をボイコットした経緯から、国の介入に警戒する向きもある

遠藤氏 そのトラウマがあるのだろう。過度な介入はするつもりはない。(スポーツ庁の)鈴木大地長官も同じだけど、スポーツ団体の自浄努力を期待してきた。しかし、不祥事が頻発している中、JOCは何の発言もしていない。自ら動いていない。かつてJOC加盟団体が補助金の不正受給をした翌年も、普通に補助金を受け取る姿勢を見せたこともあった。同じ、文部科学省が所管する補助金でも、大学、研究所が受給する科研費は、不正があった場合、返還させ、数年間交付が停止される。他の組織なら当たり前。なぜスポーツ団体だけそう考えないのか…

-なぜスポーツだけ神聖視され特別扱いが許されると思うか

遠藤氏 長い間、善意(ボランティア)で指導が行われてきたからなのでは。だから日本において、スポーツで利益を生み出すべきではないという暗黙の了解も広がった。性善説の力学からスポーツ団体には介入してはならないという風潮につながったのだろう。

-調査・指導・改善命令の権限が及ぶスポーツ団体の範囲は

遠藤氏 JOCや日本スポーツ協会に加盟し、補助金を受給している団体になるだろう。

-PT内に有識者会議が設置され議連は11月末に提言を取りまとめ、同庁、文科省に提出する予定だが、同庁が年内に発表予定の不祥事の対応策に、参考にしてもらいたいか

遠藤氏 もちろん参考にして、議連の提言も盛り込んでほしい。【聞き手・三須一紀】

◆遠藤利明(えんどう・としあき)1950年(昭25)1月17日、山形県生まれ。山形東高から中大法学部。ラグビークラブに所属。93年に旧山形1区で衆院選初当選。現在8期目。06年に文部科学副大臣。15年6月に五輪相に就任、16年8月に退任。