羽生結弦V「納得できる練習を」ジャンプで精彩欠く

オータムクラシックで優勝し、金メダルを手に笑顔を見せる羽生(撮影・菅敏)

<フィギュアスケート:オータムクラシック>◇22日◇カナダ・オークビル◇男子フリー

SPで首位発進した羽生結弦(23=ANA)が、フリーで165・91点、合計263・65点で優勝した。

新たなフリーは憧れのエフゲニー・プルシェンコ氏の代表作「ニジンスキーに捧ぐ」の曲を土台にした「Origin(オリジン)」。黒のシックな衣装で登場した羽生は冒頭の4回転ループ、続く4回転トーループを着氷。だが、中盤の4回転サルコーで転倒。4回転トーループが2回転にとどまるなどジャンプの精彩を欠き、得点は伸びなかった。荒々しいステップが織り込まれたハードなプログラムを息をきらしながら滑りきると、悔しそうな表情をみせた。

試合後には「単に体がまだこのプログラムについていっていない感じがします。これがまだ自分の実力。実力以上のものは演技でないと思いますし、この悔しさをしっかり感じながら次戦に向けてがんばっていきたい」と冷静に振り返った。

成功はならなかったが、終盤では世界初となる4回転トーループ-トリプルアクセル(3回転半)の連続技に挑もうとした。難度が高い割に基礎点は合計点の0・8倍となる技。得点のしがらみから解放され、「自分のために滑る」と決めた今季の羽生を象徴するものともいえる。「世界初とかは関係なく、スコアに縛られることなく演技できている。自分のできる最高のコンビネーションジャンプとなると、4回転からのアクセルだったり、そういったものになる。やろうかなと思っていました」。自らの美学を表現するこの技も、次戦以降へお預けとなった。

昨秋痛めた右足首は回復したが、ジャンプも、演技を滑りきる体力も本調子とはほど遠い。「自分が滑りたかったものに対しての実力があまりにも足りない。自分が納得できるような練習を積んでこないと」。理想の演技にたどりつくまで、もう少し時間がかかりそうだ。