Tリーグ松下理事長、将来的に「1億総卓球選手」を

「Tリーグ」の所属チームのユニホームを発表する、左から吉村真晴、張本智和、上田仁、丹羽孝希、浜本由惟、エリザベタ・サマラ、平野美宇、加藤美優(2018年8月2日撮影)

卓球の新リーグ「Tリーグ」がいよいよ24日(女子は25日)に両国国技館で開幕する。同リーグの松下浩二理事長が、日刊スポーツのインタビューに答えた。リーグの理念や将来像など、幅広く語った。

-24日にいよいよTリーグが開幕します。参加選手は

松下理事長 女子は、世界ランキング50位以内の選手が13人、男子は16人くらいが参戦します。これだけでも、レベルが高いリーグだと言えます。ドイツのブンデスリーガでも、男子は10人くらい。ドイツより、強い選手が取れています。女子のレベルは高いし、エース級が集まりました。

-スタートとしては上々

松下理事長 中国選手はまだ1人だけですが、良いスタートじゃないですかね。初年度でここまではなかなか入り込めないと思います。今後も中国選手も含め、各国選手にどんどん参戦してほしい。

-選手の勧誘は大変だった

松下理事長 新規のチームがほとんどで、ゼロからの立ち上げ。海外とのコネクションとかもないので、初めはリーグを通して選手の獲得に動きました。例えば、Aというチームが、あなたに興味があるけどどう? と。メールとか電話が主ですが、時に海外に出向いたりもしました。

-リーグの理念は

松下理事長 世界ナンバーワンの卓球リーグを作る。そこが1番大事にしたいところですね。後は、卓球を通したスポーツビジネスの価値を上げること。どうやって、ビジネスにつなげられるかを考えています。あとは育成ですね。チームには6歳以下の卓球教室を持つことを条件にしています。

-新リーグをどう伝えていく

松下理事長 試合をテレビ、インターネットなどで放映して分かりやすく説明できるようにしています。ネットではライブで放映しますし、Tリーグのサイトでも無料で観られます。レギュラーシーズンの試合を地上波、BS、CSでできるだけ流してもらって、なるべく多くの人に見てもらい、知ってもらうことが大事。それは初年度の目的でもあり、重視したところです。企業の方にも、認知していただいてスポンサーとして手を挙げてくれる人もいるかもしれませんからね。

-理想はドイツのブンデスリーガと聞きましたが

松下理事長 そうですね。ドイツのブンデスリーガをロールモデルとしやっていきたいと思っています。トップリーグを頂点にピラミッド型になるように。トップは世界ナンバーワンを保っていく。今後、2部、3部ができていきますが、そこで優勝したからといって、すぐトップに上がれる訳ではない。条件をクリアしていかなければいけないということで、レベルを維持していこうと思っています。

-参加チームを4チームにしたのは

松下理事長 高いレベルを保つために実力の均衡を図りたかったからです。どこが勝つか分からない。チーム数が増えると、どうしても力差が出てしまって、試合前からある程度の勝ち負けが見えてしまうのは嫌でした。そうなると面白さも半減してしまって、応援しがいがなくなってしまいます。どの試合も接戦にしたかった。

-試合形式は団体戦に

松下理事長 団体戦は4試合。2ゲーム先取で、2勝2敗となった場合は延長戦、私たちはビクトリーマッチと呼んでいるんですが、1ゲーム(11ポイント)マッチ。1ゲーム勝負であれば、レベルがちょっと違う選手同士でも、波乱やサプライズが起こりやすい。試合が約2時間半で終わるようなレギュレーションを考えました。そういう狙いもあっての団体戦です。

-シングルスの方が分かりやすいと思う人もいますが

松下理事長 長期的なリーグにするために、ただ単に勝った、負けただけにしたくなかったんです。10年、20年後を見据えた時に、練習環境とチームの育成システム、地域貢献であったり、一般の方に卓球を楽しんでもらうこととか、しっかりした形を作りたいので。トーナメントにしてしまうと、上位選手のためだけの形で終わってしまいますからね。日本の卓球界の場合は、選手を育てる環境がまだ中国みたいに構築されていません。中国みたいに次から次へと強い選手がでてくるような、仕組みを作っていかなくてはいけないと考えています。

 

-環境はまだ構築されていない。育成にも力を

松下理事長 トップ選手でさえ練習場がなかったり、コーチがいなかったり…。ほとんどの選手が、一匹おおかみみたいにやっているのが現状です。そういった状態の中で、よくここまで勝っているなというところはあります。それは1つは、親が熱心にやって育てているからです。でも、そういう親がいなくなったら弱くなっていく危険性があるんです。初期段階から小学生までがすごく重要。そこが強ければ、ナショナルチームと結びつけて育成から強化に移っていけます。でも、ここが弱いと、いくら結びつけても強くはならない。中国は15、16、17歳と各世代に強いい選手がいますが、日本は、じゃあ女子の平野美宇、伊藤美誠の下は誰ですか? 男子の張本智和の下は誰ですか? となる。全くいない訳ではないですが、少し離れてしまっていますよね。埋もれた才能は、今までたくさんあったと思います。そこの部分を新リーグを育成することによってクリアにしたかったんです。Tリーグは年齢関係なく、同じフロアで一緒に練習して強くなれます。それが実現できれば、さらに底辺が広がっていくと思います。

-指導者の育成もできる

松下理事長 指導者不足も大きな問題です。選手は指導者で決まっていくところもあります。自分の仲間たちも卓球界から離れてしまっています。私が調べたところでは、五輪、世界選手権に出場した経験のある選手で、80年代から現在まで引退した選手が男子で51、2人くらいいます。その中で、まったく卓球に携わっていない人が、17人、1/3もいる。残りの2/3の17、8人は卓球には携わっているが、指導をしてるわけではなく、メーカーに務めていたり、協会にいたりという感じ。残りの17人が現場をみています。結局、1/3しかしか現場にいられないのが現状です。プロのコーチで食べていける環境がないのは寂しいですね。

-卓球人口は、60、70万人いると聞きました

松下理事長 ドイツのブンデスリーガが、70万人が登録しています。それを日本でも実現したいですね。1億総卓球選手っていいですよね。卓球やったことのない人はほとんどいないと思いますので、ハードルは低いと思います。

-将来的なビジョンは

松下理事長 世界ナンバーワンリーグを保ちながら、目指すところは、770くらいある市町村に必ず1つは卓球クラブが存在するような形になってほしいです。それが5部か6部か分からないですが、その中でどんどんいい選手は上に引き上げていけばいいですからね。卓球をやっている人を、リーグのピラミッドの中ににすべて取り込みたいです。卓球に関われる人を増やして、卓球を職業として生活していける人が多く出てくるようにしたいですね。リーグのトップは、強さが求められるけど、2、3部はよりチームと密着していってほしいと思っています。

-家族みんなで参加できるリーグ

松下理事長 卓球は、3世代でやれるものですからね。例えば、松下家がリーグの8部に所属していて、来週、試合があるなら、お父さんと子ども、おじいちゃんの3世代で同じチームでプレーができるようになります。これは素晴らしいことだと思います。長く競技に携わって、競技を通して健康になってほしいと思います。

-現役時代に中国、欧州と渡った経験が生きている

松下理事長 ブンデスリーガのトップも下部のチームも見てきました。下部のチームは、自身の試合や練習が終わったら、その地域のトップチームの試合を見ながら、食事をしてビールを飲んで、試合を振り返ったり応援していましたね。そういう、光景がドイツには日常的にありました。当時はびっくりしたが、そんなシーンを見て、いいなぁと思ったのが始まりです。ずっと暖めてきたことです。

-開幕戦は両国国技館で行われます

松下理事長 国技館でやれるのは本当にいいことですね。広く浸透して卓球が、国技みたいになってくれればと思っています。

-試合は派手な演出もあると聞きました

松下理事長 今までの卓球のイメージとは全然、違う演出をしていこうと考えています。ライトアップはもちろん、MCなども入って盛大にやりたいですね。あとは音と光をミックスさせて演出していく。試合の合間もやって盛り上げていきたい。皆さんにはぜひ見に来てほしいですね。