福原愛さん「生涯卓球人」として決意 最後は涙なし

引退を表明した福原さんは囲み取材に応じ笑顔を見せる(撮影・江口和貴)

「卓球は恩人」-。21日に自身のブログで引退を発表した卓球女子でオリンピック(五輪)4大会連続出場の福原愛さん(29=ANA)が23日、都内で取材に応じ、引退の理由と感謝の思いを語った。若手の成長を引退理由の1つに挙げ、今後は競技の普及に尽力し、指導者としても恩返ししていくことを伝えた。生涯卓球人を宣言し、新たなスタートを切った。

「泣き虫愛ちゃん」の引退会見は、晴れやかな笑顔で始まった。福原さんは21日にブログで引退を表明。当初はブログのみでの報告にとどめるつもりだったが、反響の多さに急きょ、取材に応じた。今の気持ちを物語るかのような、白を基調とした花柄のワンピースで登場し、現役時代と変わらず、はっきりとした声で引退を表明した。

16年リオ五輪後、現役と引退のはざまで揺れたが、引退に傾いたのは5月だった。「ずっと自分主導の考えで、卓球を続ける、続けないと考えていました」と悩み続けたと打ち明け、「自分中心ではなく1歩引いて考えた時にストンと(引退が)降りてきた。考え抜いた決断ができた」とすがすがしい表情で話した。

母千代さんに伝えると「お疲れさま。リラックス」と言われたという。3歳9カ月から始まった卓球人生に常に寄り添い、励まし、支えてくれた。そんな母への思いを「いつかダブルスを組みたい」と新たな夢の1つに変えた。

引退の要因は、くしくも自身の背中を追ってきた若手の成長だった。石川佳純(全農)を筆頭に伊藤美誠(スターツ)、平野美宇(日本生命)ら若手が台頭。その活躍はネットなどで常にチェックしていたという。結婚し、出産を経て、現役復帰を模索した時、20年東京五輪を考えると、自分の役割を終えたことを認識した。「私が選手として卓球界を盛り上げなくていいと思えた」と話した。

この時期の発表になった理由に、7月に理事に就任し、今日24日に開幕する新リーグ「Tリーグ」を挙げた。「卓球界の新しいリーグの理事をさせていただく中で、私1人だけ悩んだり、気持ちを口に出す勇気もないのは卓球界に失礼」。歴史的な開幕を自身の再スタート地点にした。

現役生活を終えるが、卓球人生には続きがある。卓球を「私の恩人」と話し、「生涯卓球人」と伝えた。「すべての人と卓球を通じて知り合った」と話し、生まれ育った仙台、中学、高校と過ごした青森だけでなく、中国、台湾と国内外に「あいさつに行きたい」と感謝の“世界行脚”計画もある。また、競技の普及だけでなく、将来は指導者の道も視野に入れる。「周りから必要とされる指導者にならなければと思う」。最後まで涙はなかった。愛ちゃんが新たな決意を胸に抱き、現役に別れを告げた。【松末守司】

◆福原愛(ふくはら・あい)1988年(昭63)11月1日、仙台市生まれ。3歳9カ月から競技を始める。5歳10カ月で全日本選手権バンビ(小2以下)で史上最年少V。04年アテネ五輪で五輪に初出場。16年9月に江宏傑(台湾)と結婚し、昨年10月に長女あいらちゃんを出産。155センチ。