バトン、フル参戦即総合優勝/スーパーGT第8戦

GT500クラスチャンピオンを獲得した、左からRAYBRIG NSX-GTのジェンソン・バトン、高橋国光監督、山本尚貴

<自動車:スーパーGT最終第8戦>◇11日◇栃木・ツインリンクもてぎ(1周4・801キロ)◇決勝(GT500クラス53周、GT300クラス49周)

GT500クラスで3位に入った山本尚貴(30)ジェンソン・バトン(38)組(RAYBRIG NSX-GT)が初の総合優勝を飾った。山本はスーパーフォーミュラ(SF)に続く今季2冠、スーパーGTに初めてフル参戦したバトンは、ブラウンで走った09年のF1以来の総合王者となった。優勝はポールポジションの野尻智紀、伊沢拓也組だった。GT300クラスは最終戦を制した黒沢治樹、蒲生尚弥組が初の総合優勝となった。

元F1王者でもスーパーGT総合優勝の味は格別だった。「09年のあの時からずっとタイトルから遠ざかっていたからね。本当に素晴らしい」。3位に入ったバトンは蛇行しながらチェッカーを受けると、掲げた右拳に何度も力を込めた。

連覇を狙う平川、キャシディ組と同点で迎えた最終戦。先にゴールした方が優勝になる。37周を終えてバトン3位、平川は4位。タイム差は7秒だった。相手の猛追で、残り6周の48周目には0秒4に。真後ろにつけられたバトンだったが、前で渋滞する300クラスの車を抜いて間に挟みながらリードを保つ。先に相手のタイヤが厳しくなり逃げ切った。「ストレスで10歳は老けたよ。後ろの車の動きを見ながら渋滞を攻略した。自信はあった」と笑った。

スーパーGTは300クラスとの混走で、渋滞のクリアの仕方がポイントになる。バトンは昨年の第6戦に1度だけスポット参戦しただけで、初めてのサーキットがほとんど。高橋国光監督は「F1王者だよ。日本のレースを下に見て、嫌になっちゃうんじゃないかと心配した。だけど人の話をよく聞くし真面目。慎重だからスピンもしない。こんな結果、早すぎ。やはりスーパースター」と絶賛した。スーパーGTではタイヤウオーマーを使わないため、タイヤの温め方を相棒の山本に聞いたという。

その山本も大いに刺激を受けた。「自分がいいタイムを出さないと説得力がない」と気を引き締めた結果が参戦9年目で初の総合優勝とSF王者との2冠。トップフォーミュラとツーリングカーを同時に制するのは難しく、04年リチャード・ライアン(英国)以来14年ぶりの快挙となった。

高橋監督は「今は何も言うことはない。世界に通用する日本一のドライバー」と言う。感涙した山本は「GTはパートナーの存在がものすごく大切なレース。JB(バトン)に感謝している」と話した。2人が一体となったからこそ獲得できたタイトルだった。

◆ジェンソン・バトン 1980年1月19日、英国生まれ。8歳でカートを始め、00年に20歳でウィリアムズからF1デビュー。03年にBARに加入し、ホンダ、ブラウンGPと名前は変わったが7年間所属。06年ハンガリーGPで初優勝、09年にブラウンに移籍し年間王者に輝く。10年からマクラーレンに所属し、昨年5月のモナコGPが最終レースとなった。ポールポジション8回、優勝15回。183センチ、72キロ。

◆山本尚貴(やまもと・なおき)1988年(昭63)7月11日、宇都宮市生まれ。94年からカートを始め、02年全日本カート選手権FAクラス王者。08年から全日本F3、10年からフォーミュラ・ニッポン、スーパーGT500クラスに参戦。13年スーパーフォーミュラ王者。家族はテレビ東京アナウンサーの狩野恵里夫人と2子。164センチ、60キロ。