錦織「勝たなきゃいけなかった」憧れの人にも臆さず

<テニス:日東電工ATPツアー・ファイナル>◇11日(日本時間12日)◇ロンドン・O2アリーナ◇1次リーグB組

世界9位の錦織圭(28=日清食品)がフェデラー撃破で金星発進だ! 4大大会歴代最多20度の優勝を誇る同3位ロジャー・フェデラー(37=スイス)に7-6、6-3でストレート勝ち。14年ソニーオープン(現マイアミOP)準々決勝以来4年8カ月ぶりにフェデラーから勝利を挙げ、連敗を6で止めた。次戦は日本時間13日午後11時以降に行われる同6位ケビン・アンダーソン(32=南アフリカ)に決まった。

久々に、錦織が生ける伝説の厚い壁をこじ開けた。歴代2位のツアー通算99大会優勝で、今大会で100勝目を狙うフェデラーを、完全に沈黙させた。「1試合目を勝てたのは大きい。自信になる」。2度目のマッチポイント。相手のフォアがアウトすると、両手を突き上げた。

互いに探り合い、初戦ということもあり、ともにミスが生まれた。「正直、内容はそんなに良くなかった」。悪いときでも、勝利に結びつけるのがトップ選手の証し。これまではフェデラーが悪く、錦織がいい時でも、なかなか勝ち切れなかった。それを覆した。

第1セットではミラクルショットも飛び出した。錦織から5-6で15-30。残り2点でセットを落とす瀬戸際だった。フェデラーのフォアの強烈リターンを、片手バックで当てただけでストレートにカウンター返球。相手のいないコートに球が吸い込まれた。ピンチを逃れその後のタイブレークにつなげた。

フェデラー戦は今年の2連敗を含み、6連敗中だった。「何かを変えないといけない」と挑んだ大舞台での一戦。課題の第1サーブが第1セットは47%しか入らない中、第2サーブで71%の確率で得点につなげた。深く、フェデラーの苦手なバックの高い球を配球したことでミスを誘った。

フェデラーに憧れ、「見ていて最も面白い」とフェデラー好きを公言してはばからない。ただ、もう「勝てない相手だとは思っていない」。この日も、なかなかコントロールできない球を必死で返球。エンジンがかからない元王者に「今日は勝たなくちゃいけない試合だった」と、勝利を引き寄せた。

フェデラーが出場した16回のツアー・ファイナル1次リーグで、1セットも奪えず敗れたのは初めて。新たな記録を打ち立てた錦織だが「反省点は多い」と気を引き締める。次戦は過去5勝3敗のアンダーソン。2勝目を挙げ、準決勝進出に大きく前進したい。【吉松忠弘】

◆錦織の準決勝進出メモ 13日に行われるアンダーソン戦に勝ち、フェデラーがティエムに勝つと、錦織の準決勝進出が確定。錦織は2勝。アンダーソンとフェデラーが1勝1敗。ティエムが2敗。15日最終戦でアンダーソンとフェデラーが対戦。どちらかしか2勝にならず、2勝が3人以上にならないため、錦織のB組2位以内が決まる。

◆ATPツアー・ファイナル 70年に始まった男子最終戦。年末世界ランキング上位8人に出場資格。4人2組に分け、各組総当たり戦。各組上位2人が準決勝に進み、トーナメント方式で優勝を争う。出場料20万3000ドル(約2230万円)。1次リーグ1勝につき同額がもらえ、全勝優勝なら271万2000ドル(約2億9800万円)を獲得。