羽生結弦、右足首靱帯損傷も「気持ちはファイナル」

表彰式に松葉づえ姿で登場する羽生(撮影・PNP)

【モスクワ18日=高場泉穂】右足首の負傷を抱えながらグランプリ(GP)シリーズロシア杯を制した羽生結弦(23=ANA)が、フリーから一夜明け、エキシビションは辞退し、表彰式に出席した。チームドクターの触診により右足首の両側を痛めていることが判明したが、それでもGPファイナル(12月6日開幕、カナダ・バンクーバー)出場をあきらめない意思を示した。

フリーから一夜明け、羽生は衣装を着てスニーカーをはき、異例の松葉づえ姿で表彰台に立った。一番高い台に上がり、大声援を浴びると「ありがとう」とつぶやいた。表彰式後は上着も着ずに車に乗り込み、すぐ会場を後にした。

17日のフリーを控えた練習の際、4回転ループで転倒し、右足首を負傷。痛みを抱えてフリーを滑った。この日、羽生は日本連盟を通じ「気持ちはファイナルに向け、全力で治療します」とコメント。GPファイナル出場の意思を示したが、厳しい状況は変わらない。前夜、アイシングと患部圧迫を繰り返すなど治療に努めたが、腫れが生じた。エキシビションを辞退し、表彰式のみ出席した。

チームドクターによる触診により、右足首両側を痛めていることが分かった。モスクワの会場で取材に応じた日本連盟の小林芳子フィギュア強化部長は診断名を「前下脛腓(ぜんかけいひ)靱帯(じんたい)損傷」「三角靱帯損傷」「腓骨(ひこつ)筋腱(けん)損傷の疑い」と明かした。前日、羽生は「3週間は安静」と医師から指示があったと説明したが、詳しい検査はまだしておらず、今後の治療法や治癒までの期間は不透明だ。

強行出場したことで患部に負担はかかった。それでも必死に滑ったその思いは届けたい人へ届いていた。今季のフリーは06年トリノオリンピック金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコ氏(36)の代表作「ニジンスキーに捧ぐ」の曲。会場に来られなかったプルシェンコ氏はインスタグラムを通じて「本当に君を誇りに思う。友人ユヅさんの早期の回復を願っているよ」とつづった。そのプルシェンコを指導した名将ミシン・コーチも、会場で羽生の演技を見て「とてもうれしかった」。羽生を「フィギュアスケート全種目の中の最高傑作」とたたえた。

GPファイナルだけでなく、中4週の全日本選手権(12月20日開幕)出場も危ぶまれる。16年はインフルエンザ、17年は右足首のけがで欠場。今年欠場となった場合でも、3枠の世界選手権代表に特例で選出される可能性があるが、小林強化部長は「私1人だけでは決められない」とした。